世界の半導体産業の市場規模は、2025年には前年比15%以上の成長を遂げ、100兆円の大台を超えるのは、ほぼ確実な状勢だ。2030年には200兆円超えを予想する向きもあり、現在の製造業トップの自動車産業400兆円の市場規模を一気に追い上げることになるだろう。
これらの数字から、筆者は半導体バブルが、今後もまだまだ続くと考えている。その証拠に世界を見渡しても、米国と中国との間で繰り広げられる半導体戦争は、ひたすら過熱するばかりなのだ。
半導体チップへの融資額のランキングでも、中国がダントツで21兆3000億円もの金額を誇り、次いで米国が11兆2500億円、韓国が8兆2500億円、EUが6兆9450億円となっている。中国が凄まじい金額を融資する理由は、半導体の国産化率を徹底的に引き上げるべく、半導体デバイス、半導体製造装置、そして半導体材料に至るまでを可能な限り、海外からの輸入に依存しないという強い方針があるためだ。
一方の米国企業も半導体の世界シェアは、50%を超える圧倒的な存在感を放っている。しかし、実は米国本土における半導体の生産はそのうちの10%程度しかない。残る90%は、台湾のTSMC、UMC、PSMCなどをはじめとするアジアのシリコンファンドリー(自社ブランドを持たない生産委託企業)に徹底的に依存しているのである。これは安全保障上、多くの問題がある。
台湾のTSMCは微細な回路を半導体素材に形成する「微細加工プロセス」の技術力が非常に優れており、極小の2ナノメートル半導体を製造できる世界で唯一の企業だ。売上額は、2023年段階で10兆3000億円にのぼり、半導体の生産額でもインテル、サムスンの上を行く事実上の世界チャンピオンである。
もし仮に台湾有事が勃発し、台湾が中国の支配下に置かれることがあれば、戦略物資である半導体のイニシアティブを中国が握ることになり、米国の安全保障上の地位は脅かされる。
そこで米国は半導体企業に莫大な補助金を投じるようになった。例えばTSMCに呼びかけて、アリゾナに新工場建設の動きも見せている。第一工場及び第二工場の投資額は5.5兆円、最近になって第三工場の建設も内定し、投資額は4兆円と言われる。TSMCは実に計9.5兆円もの金額を投入して、新工場を立ち上げるのである。それはひとえに中国への警戒心があるからだと言える。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : ノンフィクション出版 2025年の論点