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年齢差25歳の絵本作家×女優の対談から学んだ「人気者であり続けられる理由」

編集部日記 vol.30

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 1973年に神奈川県茅ヶ崎で生まれたヨシタケシンスケさん(50)と、1998年に鹿児島県串木野市で生まれた上白石萌音さん(25)。

 年の差25歳の、絵本作家と女優。

 年齢も、生まれた場所も、職業もぜんぜん違う。普通なら出会わないような組み合わせです。

 二人を繋ぐものは「絵本が大好き」というただその一点。

 そして、萌音さんはヨシタケさんの長年の大ファンです。

 今をときめく超多忙なお二人が、スケジュールの合間を縫ってやっと実現した待望の対談企画でした。

アトリエには美しい陽が差し込む ©文藝春秋(撮影=杉山秀樹)

 10月のよく晴れた日の昼下がり。

 新築されたヨシタケさんのアトリエに到着した萌音さんは、壁一面に並ぶ絵本に歓声を上げ、ヨシタケさんの小さな小さな原画コレクションを食い入るように見つめていました。

 会話は驚くほど弾み、意外な共通点が次々と浮き彫りになります。

・美談に感動しづらい
・自己肯定感の低さは筋金入り
・日々の辛い経験をせっせとタンスに貯めている

 話が「好きな絵本ベスト3」に及ぶと、二人のテンションは最高潮。

 ヨシタケさんが「『からすのパンやさん』の色んなパンがズラッと並んだ見開きが好きだった」と言えば、萌音さんは「あの見開きはすぐに思い出せます」と力強く頷きます。

『からすのパンやさん』(かこさとし、偕成社)の「大好きな見開き」

 萌音さんが「『こんとあき』でキツネのぬいぐるみの『こん』の尻尾が電車の扉に挟まれてずっと凹んでいるところが好き」といえば、ヨシタケさんも「挟まれてましたねぇ」とすかさず同意するのでした。

『こんとあき』(林明子、福音館書店)

 本を読むということは、世界のどこかにいる見知らぬ誰かと同じ景色を見て、似たような体験をすることなのだと、改めて思わされます。

 共通点は、もうひとつ。

 2013年、ヨシタケさんが絵本作家として第一作『りんごかもしれない』を刊行し、40歳にして遅咲きのデビューを果たした年、中学1年生で既に女優デビューしていた上白石萌音さんも、鹿児島の故郷を離れ東京での新生活をスタートさせたのでした。

 萌音さんはその後、オーディションで主演を勝ち取った映画「舞妓はレディ」(2014年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、アニメ映画「君の名は。」(2016年)では主人公・三葉の声を演じ一大ブームを巻き起こします。その後の活躍ぶりはみなさん御存知の通り。10代から20代へ、国民的女優への階段を一気に駆け上がってきた「この10年」だったのです。

 そして、「人気者」になったお二人の最後の共通点は、「エゴサーチを絶対しないこと」。

 理由は「怖いから」。

 本が何万部売れようと、何万人の人を知っているわけじゃない。出会って直接言われたことだけを指標に、自分の責任をしっかり全うしていきたい。

「本当の自分」は周りの親しい人が知っていてくれればいい――。

 個人の知りえぬところで拡散し、拡大していくイメージや人気。そうした渦のようなものからうまく距離を置き、自分をしっかり守りながら、役割を果たしていく。ある種のとても誠実な姿勢に、お二人が「人気者であり続けられる理由」を見た気がしました。

「マイベスト3」を披露し合うお二人

 記事では、「初対面とは思えない意気投合ぶり」と書きました。ただ考えてみれば、ヨシタケさんの絵本には「どの本も全部自分でしかない」と言うほど、“ヨシタケさん自身”が詰まっています。

 つまり、ヨシタケ作品のファンである萌音さんはこれまでも、絵本を通じて何度もヨシタケさんに会っていたのですね。

 対談の最後、「絵本を作ってみては」とヨシタケさんに促され、萌音さんも満更でもなさそうなお返事。

――「ストックならいっぱいあります」。

 これは、期待できそうです。

(編集部・佐藤)

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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