一年の計は初場所にあり

大相撲新風録 第36回

エンタメ スポーツ
復活を懸ける横綱照ノ富士

 一年の計は元旦にあり。もとい大相撲界の一年を占う鍵は、一月初場所にあると言われている。2024年の大相撲界は、激動の一年となりそうな予感だ。

 まずは横綱照ノ富士。満身創痍のまま横綱となり、綱を張ること14場所を数えるが、うち8場所を途中休場・全休し、現在も(途中休場含む)3場所連続で土俵に上がれず。横綱審議委員会から初場所出場を促されており、腰と膝に大きな爆弾と不安を抱えながら、経験値と気力をふり絞り、進退を懸けて臨む年になる。

 大関霧島は、昨年納めの十一月九州場所で2度目の優勝賜杯を抱き、この初場所には横綱昇進に挑む。師匠の陸奥親方(元大関初代霧島)は4月に定年退職を迎えるが、その花道に華を添えられるか。

 大関昇進目前なのが、元横綱琴櫻を祖父に、元関脇琴ノ若(初代)を父に持つ琴ノ若だ。三役として3場所通算31勝を挙げており、初場所の成績次第では“大関当確”が出るはずだ。

 元大関朝乃山の“大関復活劇”も見どころだろう。21年、コロナ禍のなか相撲協会のガイドライン違反で1年間の謹慎処分を受け、三段目まで番付を落とすも、先の九州場所では前頭筆頭まで復活。注目を浴びたなか、まさかの初日から休場。執念で途中出場するも負け越しとなり、一進一退の日々を送る。しかし、館内での声援の大きさは随一で、大関復帰となれば“朝乃山フィーバー”となること受け合いだ。おっとりした元大関にエンジンが掛かるか。

 一方で新しい息吹きもある。初場所で新入幕として挑む“大型新人”大の里だ。2年連続アマチュア横綱として二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)のもとに入門。身長193cm、体重175kgの恵まれた体格で、優勝こそ逃したもののここ2場所連続で十両優勝戦線を盛り上げ、誰もがその将来性に太鼓判を押す。

 元横綱白鵬の愛弟子である伯桜鵬にも期待大だ。ザンバラ髪どころか坊主頭の関取として話題をさらったのは記憶に新しい。しかし肩の負傷で手術をし、2場所連続で休場中となっている。ケガを治し、今年は満を持して復帰する。

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source : 文藝春秋 2024年2月号

genre : エンタメ スポーツ