受賞のことば 朝比奈秋
一つの物語が思い浮かんでは、時間の経過につれて形ある小説になっていく。書くこと以外では拭い去れないインスピレーションとして物語が来て、それが私の知性と心と本能を使って小説になっていくのだとしたら、私は通路。
小説を書くことが苦しいのは、私がいつも間違っているからだろう。物語が身体の中を通過していくとき、私の内側にへばりついた自我や偏見を削り取っているのだ。いつだって物語はそのままだ。
物語に削り取られた空間、それの影響はすべてに及ぶらしい。これこそが自分だと信じられるものが、その空間の中にほとんど残っていない。そんなことが実感される時、微かな喜びがこみあがってくる。いつまでもそうあれるのなら、私はただ運のいい恵まれた人間。
〈略歴〉
1981年生まれ。京都府出身。2021年「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。
受賞者インタビュー 朝比奈 秋
湧いてくる物語には抗えない
──受賞が決まった昨晩(7月17日)は、ゆっくり眠れましたか。
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source : 文藝春秋 2024年9月号