第171回芥川賞受賞者インタビュー 松永K三蔵「朝早く会社近くの喫茶店で書いています」

エンタメ 読書 芥川賞

受賞のことば 松永K三蔵

 本など読まなかった十四歳の私に母は、気が滅入るほど分厚いドストエフスキーの『罪と罰』を与えた。なぜだか私はそれを読破して、小説を書き始めた。母が亡くなった後、書くことは私の支えになった。

 小説家になること。母の墓前にそれを誓い、二十年以上かかったが、それは果たせた。

 そして芥川賞の選考会当日、東京に発つ前に母の墓前にひとり、報告に行った。──“三蔵”。母が敬愛してやまなかった祖父の名前を残したい。目を閉じると小さく風が立った。それはいいから、と母は笑うようだった。それは私の勝手な野心だが、母に対する私なりのけじめだった。やっぱり母は笑うだろうけれど、地元に戻って、また私はひとり、報告に行こうと思う。

〈略歴〉

1980年茨城県水戸市生まれ。関西学院大学卒。2021年「カメオ」で第64回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。

 受賞者インタビュー 松永K三蔵

松永K三蔵氏 ©文藝春秋

ソロ登山は文学に通じている

 ──受賞の連絡はどちらでお待ちになっていたのでしょうか。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年9月号

genre : エンタメ 読書 芥川賞