「他(た)なる映画と 1・2」濱口竜介さんインタビュー

NEW

エンタメ 映画 読書
濱口竜介氏(本人提供)

「この本に載せた自分の言葉に責任を取るつもりはないです。先に行くために置いていく言葉っていう感じで」

 あっけらかんと語る。最新作「悪は存在しない」も高い評価を得た濱口竜介監督が次に出したのは映画ではなく、1、2巻合わせて800ページ以上におよぶ大著だ。1は過去の映画講座を、2は雑誌等に寄稿した文章を集成している。

 冒頭の発言の真意を聞くと、

「映画を巡る発言は、ハッタリみたいなものです。映画制作と理論はほぼ関係がない。実際の現場では理論的なことは一切考えません。ただ、これだけ思考を巡らせたことが、現場で判断をする時に役立ってくれればいいな、という程度のもので。今後も変わるでしょう」

 そんな言葉とは裏腹に、いざ読み進めると、柔らかな語り口でリュミエール兄弟やカサヴェテス、ブレッソン、さらには相米慎二から黒沢清まで、東西の巨匠の映画を精緻に、かつわかりやすく分析。作品の構造を言語化する手腕はとても“ハッタリ”とは思えない。

濱口竜介『他(た)なる映画と 1・2』(インスクリプト)各2750円(税込)

 映画批評が主軸の2冊だが、「1」の冒頭は意外な問いから始まる。「なぜ映画を見ていると寝てしまうのか」。著者自身が学生時代、その壁にぶち当たった。

〈私が出会った現実というのは、「映画を見たら、寝てしまう自分」というものでした。(略)映画というものは見に行けば何がしか楽しいイベントで、ワクワクとして見るものである、という素朴な認識は砕かれて、自分にはおよそ理解できない映画というものが目の前に現れた〉

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年10月号

genre : エンタメ 映画 読書