「この本に載せた自分の言葉に責任を取るつもりはないです。先に行くために置いていく言葉っていう感じで」
あっけらかんと語る。最新作「悪は存在しない」も高い評価を得た濱口竜介監督が次に出したのは映画ではなく、1、2巻合わせて800ページ以上におよぶ大著だ。1は過去の映画講座を、2は雑誌等に寄稿した文章を集成している。
冒頭の発言の真意を聞くと、
「映画を巡る発言は、ハッタリみたいなものです。映画制作と理論はほぼ関係がない。実際の現場では理論的なことは一切考えません。ただ、これだけ思考を巡らせたことが、現場で判断をする時に役立ってくれればいいな、という程度のもので。今後も変わるでしょう」
そんな言葉とは裏腹に、いざ読み進めると、柔らかな語り口でリュミエール兄弟やカサヴェテス、ブレッソン、さらには相米慎二から黒沢清まで、東西の巨匠の映画を精緻に、かつわかりやすく分析。作品の構造を言語化する手腕はとても“ハッタリ”とは思えない。
映画批評が主軸の2冊だが、「1」の冒頭は意外な問いから始まる。「なぜ映画を見ていると寝てしまうのか」。著者自身が学生時代、その壁にぶち当たった。
〈私が出会った現実というのは、「映画を見たら、寝てしまう自分」というものでした。(略)映画というものは見に行けば何がしか楽しいイベントで、ワクワクとして見るものである、という素朴な認識は砕かれて、自分にはおよそ理解できない映画というものが目の前に現れた〉
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source : 文藝春秋 2024年10月号