「令和」以外にもふたつ「総理談話」が準備されていた
「七転八倒だったですね。本当にうれしい!」
新元号「令和」が決まった4月1日の午後9時50分すぎ、首相・安倍晋三が帰宅するのを見計らって電話すると、切り際にこう語った。安倍とは何度も話しているが、こんなに感情を露わにするのは初めてのことだ。それに、スムーズに進んだかに見えた新元号決定を「七転八倒」と表現した。何があったのだろう。そもそも、新元号は政府内でどういうプロセスを経て決まったのだろうか。
政府が同19日に公表した「元号に関する懇談会」と「全閣僚会議」、衆参両院の正副議長の意見聴取に関する議事概要では、議論の内容は示されてはいる。しかし、発言者ごとにまとめられたものではなく、論議の流れ、雰囲気は全く伝わってこない。また、原案提示に至るまでの官邸の苦悩もまるで分からない。
取材を進めていくうちに、元号決定前後、安倍らの肉声を聞いたジャーナリストとして、彼らがどう語っていたかをできる限り記録しておくことが使命ではないかという思いに至った。普段、取材の経緯や取材源を明かさない。しかし、元号決定のプロセスは歴史に刻印しておかなければならないことだ。安倍ら関係者の理解も得て、執筆することにした。
この原稿で全容を解明したと言い切る自信はまだない。足りないところは補足していただきたいし、私自身も取材を続けたい。
徹底した秘密保持
まず、今回の元号決定で押さえておかなければならないことは、天皇陛下が生前退位されることに伴い、陛下がご存命中に、次の元号を決めなければならなかったことだ。憲政史上初めての事態に、政府が最も重視したのは秘密保持(保秘)だった。
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source : 文藝春秋 2019年6月号