手術・リハビリのスピード感が生命予後を左右する (取材・構成 内田朋子・医療ジャーナリスト)
骨折が死亡リスクを高める
私たちの体はおよそ200本の骨に支えられています。そのなかで「大腿骨」とは、股関節から膝を繋ぐ、いわゆる太ももの骨。人間の体のなかにある最も長い骨で、体を支えたり、歩行などの動作に使う重要な部位です。
一見すると太くて頑丈そうな骨ですが、加齢とともに脆くなり、思いのほか折れやすい。詳しくは後ほど説明しますが、骨折すると太もものつけ根に強い痛みを感じ、立つことや歩くことが困難になってしまいます。私たち整形外科医が日々の診療において頻繁に経験する症例であり、手首の骨折、背骨の骨折と並んで高齢者に多い「三大骨折」の一つとされています。
なぜこの3か所が折れやすいのか──諸説あるものの、転び方が影響するのは間違いありません。前方に転んで手をつくと手首を骨折し、後ろに転んで尻もちをつくと背骨や大腿骨を骨折しやすいというわけです。なかでも大腿骨骨折は70代以上に多く、日本国内では年間約15万件にも及ぶとされています。
昨年10月には、90歳のお誕生日を目前に控えた上皇后美智子さまが、お住まいの仙洞御所で転倒し、右側の大腿骨上部を骨折され、手術を受けられたと報じられました。幸いなことに、翌月には杖をつきながらも自らの足で歩くお姿が見られました。多くの人が順調な経過に安堵すると同時に、そのご回復の早さに驚いたようです。

早い回復が望まれるのは、大腿骨骨折が生命予後に大きな影響を及ぼすためです。アメリカの55〜81歳の女性6459人を対象にした調査では、骨折した人のうち20%以上が4年以内に亡くなり、とりわけ大腿骨近位部を骨折した人は顕著に死亡リスクが高いことが明らかになりました。
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