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批判殺到の「入管法改正」 法案の是非論で「中身」が置き去りにされている

2018/12/19

在留資格は34種類ある

 さて改正入国管理法で百家争鳴状態になっている外国人問題だが、この256万人の在留外国人には実に34もの在留資格があることは意外と知られていないのではないだろうか。

 在留資格のうち最も割合の大きいのが一般永住者と呼ばれる、日本国政府が許可した日本に永住している外国人だ。その数はすでに75万人に及んでいる。このうちの約33%が中国人、17%がフィリピン人である。

 次に多いのが特別永住者だ。これは戦前から居住している韓国や朝鮮の人びとに付与された在留資格で1991年11月施行の「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」という恐ろしく長い名前の法律に照らして永住が認められている人をさす。その数は33万人。

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 留学生も31万人に及んでいて、中国が約40%、ベトナムが23%、ネパールが9%を占めている。いまや多くの私立大学で留学生を招かなければ経営が成り立たないという大学が増えているのも背景だ。

※画像はイメージです。 ©iStock.com

技能実習生の担い手は中国からベトナム、フィリピンへ

 この3つの在留資格だけで約140万人もの外国人が日本に在留していることになる。実は今回議論の対象になっている技能実習生は2017年6月で25万人程度にすぎない。つまり在留外国人の約1 割相当の数にしかならない対象への新たな資格新設が議論になっているということだ。

 ただ、この技能実習制度に基づき在留資格を得ている人は近年急増している。2012年には技能実習生の数は約15万人であったからこの5年間で66%も増加していることになる。つまり外国人技能実習制度が国内の単純労働の受け皿として非常に重要な位置を占めるにしたがって、この制度の拡充が不可欠になってきたことが、人手不足に悩む国内産業界の切実な声となっていったのである。

 また技能実習生の内訳をみるとベトナム人が41.6%の10万4800人、中国人が31.7%の7万9959人だが、これを5年前の2012年と比較すると、中国人は28%も減少したのに対してベトナムは6.3倍、フィリピンが2.9倍、インドネシアが2.2倍になっている。

 特にベトナムやインドネシアは在留者の約40%が技能実習制度の資格を利用した在留になっているのだ。