スマホアプリで復活した「ぴあ」で、今年の一月から連載を始めた。タイトルは「実は洋画が好き」――。
あまり表では語っていなかったので驚かれる人もいるかもしれないが、実は十代の終わりくらいまで、とにかくミーハーに洋画を追いかけていた。
「映画館で映画を観るのは楽しい」と初めて思ったのも、洋画だった。以前に本連載で述べたのだが、生まれて最初に劇場で観た映画『南極物語』のおかげで「映画館は怖い」と思うようになっていた。それを払拭してくれたのが、洋画の『グーニーズ』。新宿歌舞伎町のミラノ座で観たのだが、自分に近い年代の少年たちの冒険がとにかく楽しくて、映画館の大スクリーンで映画を観る素晴らしさに浸った。
以来、ミラノ座で予告編のかかった映画は片っ端から観ていくことにした。そして、その中には日本映画もあった。今回取り上げるアニメ『劇場版 北斗の拳』も、そうした一本だ。ミラノ座で予告が流れ、その地下にある系列館の新宿東急で上映されている。
原作は「週刊少年ジャンプ」で連載中だった同名漫画。核戦争によって人類の大多数が死滅し、生き残った者たちは暴力で互いに覇を競い合う。そうした中で「北斗神拳」の使い手・ケンシロウは虐げられる弱き者たちのために戦う。
原作もテレビアニメも好きでたまらなかったのもあり、劇場版の予告編をミラノ座で観た時は大いに興奮した。そして、喜び勇んで劇場へ。
よく考えてみると「おかしい」と思うことがある。東映動画が制作した、ジャンプ原作のアニメ映画化なら、通常なら「東映まんがまつり」として子供向けのパッケージで公開されるはずだ。それがなぜ、洋画系の劇場で大人向け作品と並列の扱いで上映されているのか――。それは今だから思えることなわけだが。
そして、とんでもないものを目にする。腕が飛び、首がもげ、人体がバラバラに砕け散り、おびただしい血が吹き出し、死骸の肉片があちこちに散らばっている――。そんな残虐バイオレンス映像のオンパレードだったのだ。原作もそういう内容だったが、あくまで動かない絵。テレビではそこは巧みにぼかしていた。それが、映像としてストレートに飛び込んできたのだ。しかも、大スクリーンから。
さらに容赦なかったのは、この時の予告編で流れていたのが、ゾンビ映画の中でもスプラッター描写の激しい『死霊のえじき』。予告編も本編も、あまりにハードコアだった。
で、困ったことに。それが決して不快ではなく、変に病み付きになってしまったのだ。
そんな原体験の頃を懐かしく思い出す、今日この頃だ。