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当時コメディアンだった伊東四朗は……

伊東四朗 ©文藝春秋

 テレビ鑑定家の宝泉薫氏が選ぶ名脇役おじさんは、歴代最高視聴率62.9%を記録した「おしん」に出演した伊東四朗(81)。父親役を演じた。

「当時コメディアンだった伊東が急に寡黙でぶっきらぼうで娘のことを売り飛ばすような酷い父親として登場した。語り草になっている、おしんを見送るシーンは、別撮り(おしんとは別々の撮影)を巧みに編集していました。でも伊東は根が芸人なので後日、あれは別撮りだったと明かしてしまう。しかし、結果的に芸の幅が広がりましたよね」(宝泉氏)

 宝泉氏が日本朝ドラ史に刻みたいと脱帽するのが「べっぴんさん」で靴職人役を演じた市村正親(70)だった。

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「市村はヒロインに服を作るきっかけを与える役なんですけど、そのストーリーとは別にクリスマスのシーンがあったんです。聖夜に雪が降ってきたときに、市村が『ホワイト・クリスマス』を歌い出すんですよ。ミュージカルスターだから上手いんですけど、歌い上げたあとに、市村が照れくさそうに笑う。彼をキャスティングしていたことによって、こんな仕掛けが可能だったんだなと思いました。フィクションとノンフィクションが融合したような場面でした」(同前)

『朝ドラ100作 ファン感謝祭』名場面で1位に選ばれた

 渡瀬恒彦(74)は演技力を含めた圧倒的な存在感が凄かった、と絶賛する。

吉田鋼太郎 ©文藝春秋

「『ちりとてちん』で落語家の師匠役を演じた。落語を止めていたけど、いろいろな人に気持ちを動かされて3年ぶりに高座に上がるシーンはNHKの『朝ドラ100作 ファン感謝祭』名場面で1位に選ばれていましたね。『わろてんか』など芸事の話は数年に1度あるんですが、役者さんが芸人をやるときにあまりにも下手だと成立しない。役と芸が渡瀬恒彦に入っていたということですよね。努力というよりはセンスです」(同前)

 上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、あまりの反響から急きょ新たなシーンが台本に書き込まれるほどの人気だった「花子とアン」の吉田鋼太郎(60)を強く推す。

「吉田さんが演じた嘉納伝助の妻は若い男と駆け落ちするんです。妻を寝取られた男として恥をかかされますが、それに耐えながら男の美学として妻を許し手放す。吉田さん人気が上がって、ドラマ全体にすごく貢献した。昨年の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)にまで繋がった吉田人気を確立した役です」