熊代選手にとって、“訓示”とは?
「でも、やるからには笑わせたい。笑わせて、雰囲気を良くしたいんですよね」と、ムードメーカー。シートノック後にチームで行われる円陣、通称“声出し”の中で、外崎修汰選手が具志堅用高氏の話題を取り上げるなど、『偉人編』が流行った時期があったという。それにも、早速便乗した。
「なんかみんな最近、偉人にハマってるらしいから、俺も偉人を1人紹介するわ。それは、真弓夫人。俺の嫁や。今まで結婚生活7年、いろ〜んなことを言われてきた。その中で、1つ紹介する。どういう経緯があったかはちょっと忘れたけど、喧嘩っぽくなってて、その最後に、『私がおらんかったら、何もできんくせに』と言われた。まさにその通りや。みんなもそういうことを言われないように、今日も頑張っていこう!」。大爆笑だった。
また、直近では、6月14日vsヤクルト戦。
熊代「最近、(スタンドで)見てるファンから『熊代、大丈夫?』みたいに思われているらしいから、俺が適当に『熊代』と言うから、それを合図に、お前らちょっと笑ってくれ! いくぞ、『熊代!』」
選手たち「ハハハハハ〜(笑)」
熊代「そうそう、それそれ! 今日も行くぞ!!」
ネタ切れのため、苦肉の策として捻り出した、「周りの人に面白そうに見せる」ための“強制爆笑”だったが、ことのほか好評だった。笑ったことで、チーム全員のテンションが上がり、試合は初回から5安打3得点、4回には一挙8得点を挙げる大勝となった。シートノック時、誰かが呟いたのを、熊代選手は確かに聞いたという。「やっぱり、笑うってことは、大事なんだな」。それを聞いて、気付かされた。「“訓示”にとらわれてるからダメなんだなと。もっと柔軟に、貪欲に、いろんなことをやって、最終的にチームがまとまるようにしたい」。
某人気ドキュメンタリー番組のごとく、改めて聞いてみた。「熊代選手にとって、“訓示”とは?」。
「自分自身にもそうですし、チームにとってもそうなってほしいと思うのですが、1つの『モチベーション』ですかね。それがあるから頑張れる。もちろん、プロ野球選手としては、野球でのモチベーションが一番です。それプラス、みんなも聞きたくない日がある中で、聞いてくれる。それに対して、僕も言いたくない日もあるけど、絶対にテンションを上げておかないと言えないこと。それでみんなが本当に爆笑してくれたら、僕ももちろん、みんなもテンションが上がるでしょうし、それがチームの雰囲気、さらには多少なりともパフォーマンスまでも左右すると思ったら、やっぱり『モチベーション』なんだと思います」
1つのことをやり続ける姿勢と、「4回に1回ぐらい笑いが起こる」(外崎選手)話術がもたらす効果は、決して小さくはない。すっかりチームのルーティーン化された“熊代劇場”。今では、ホームゲームの毎試合、リアルタイムでメットライフドームのオーロラビジョンにその様子が映し出されている。爆笑か? 失笑か? 球場に足を運んだ際は、ぜひ、その模様も一緒に楽しむことをオススメしたい。
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