日本三霊山に数えられる白山の麓(ふもと)の町・三ツ屋野の秋祭りに、ぼろをまとった異様な姿の「ニワカ」が出没するのをご存知だろうか。地元の人に畏れられ、親しまれる「ニワカ」や、「お盆よりも帰省する人が多い」という三ツ屋野町の秋祭りを取材した。
大の大人が「今でも怖い」と語る「ニワカ」
「ニワカ」について知ったのは、「文春オンライン」編集部が“出張編集部”として利用している「岩間山荘」の女将さんの一言がきっかけだった。週末、ご実家がある三ツ屋野町で秋祭りを案内してくださるというお話の後、女将さんがぽつりとこう漏らしたのだ。
「でも午前は行きたくないなあ……『ニワカ』が出るから」
「ニワカ」? 耳慣れない言葉に、編集部一同の頭の中には「?」が浮かんだ。
「赤いお面にボロボロの布をまとって、走り回ってるのがおるんですよ。何をするかわからないから、すごく怖いの」
詳しく聞くと、三ツ屋野町には秋祭りを運営する若い衆の中から酔っ払った人を選び、衣装を着せて「ニワカ」に変身させる風習があるという。一旦「ニワカ」に変身してしまえば、中の人が誰かは秘密。この「ニワカ」が、子どもを怖がらせたり、家を回ったりするらしい。しかも、常時2〜3匹、町内を走り回っているという。
「大人になった今でも嫌だ」という女将さん。しかし、「ニワカ」は町の人を困らせるだけの存在ではないそうだ。
「『ニワカ』って神様の遣いなので、すごくありがたいものでもあるんです。触られたり、抱っこされた子どもはすくすく育つし、ニワカが来た家には幸せが訪れるといわれているんですよね。そうは言っても、やっぱり会いたくないんだけど……(苦笑)」
町の人たちにアンビバレントな感情を抱かせる「ニワカ」。ぜひ朝からお邪魔させてください、とお願いした。
秋祭りの日の朝、すでに異様な雰囲気が
秋祭りの日の当日。三ツ屋野町に到着すると、すでに異様な雰囲気が。