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「松のない所にマツタケなんて信じられないでしょ? でも、これマツタケだからと家に持って帰って、『さあこれどうしよう』って時に、金沢に池田先生というきのこの本書かれている先生がいらして、電話番号調べて電話をかけたら『持ってらっしゃい』と言われ、持っていったら説明してくれて、そこで『2年前にきのこ会を立ち上げたので貴方たちもきのこ知りたかったらどうぞ』と。それで地元のきのこ会に入会して現在に至ります。それが20年前」

「食べれる食べられないは関係ないんですよ、私は」

 このマツタケとの出会いをきっかけにして、きのこ会のメンバーと一緒に山に分け入り、きのこを採っては先生に説明してもらったという。北陸各県にはきのこ会があり、同好の士がさまざまな情報交換や「ツアー」を行っている。「同好会みたいなものですね。みんながきのこを持ち寄ると、毎回新しい発見があるんです」と名人は笑いながら語る。

 

 また、きのこを探す楽しみは、なにも食べることに限らないと名人は語る。

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「食べれる食べられないは関係ないんですよ、私は。こういうきのこがあったのか、って。それが一番うれしい」

 珍しいきのこに出会えると、名人も嬉しくなる。中には十数年に1度という激レアなきのこもあるという。

「2年ほど前にコウボウフデという珍しいきのこが山ほどあったんです。ちょっと青黒いキノコなんですけど、沢のあたりからいっぱい生えてて。十何年前に1回採ってきたら先生に『珍しいきのこをありがとう』と言われたのが、それっきり見てなかったのに、2、3年前に再び出ていたんですよ。たくさん生えていたので、これだけ見たら『やや稀』なんて思わないでしょ」

 

「食べてどうじゃなくて、見た目でやったーと思うね」

 そんな名人が見つけて一番嬉しくなるきのこを聞いた。

「ホウキタケ。サンゴみたいなきのこ。舞茸は美味しいけれど、普段から採っているからあまり感激しない。ウスムラサキホウキタケが並ぶと本当にサンゴなんですよ。紫のサンゴ。あれは楽しい。綺麗だし、軸が真っ白で、サンゴの枝がまだ若いホウキタケは綺麗ですよ。食べてどうじゃなくて、見た目でやったーと思うね。私自身が嬉しい」

 ウスムラサキホウキタケが手元の図鑑に載っていなかったので、名人に言われて検索すると、燃え上がるような淡い紫が印象的な美しいきのこだった。名人が興奮するのもわかる。