文春オンライン

「血液クレンジング」をめぐる、はあちゅうさんと物好きの終わらない宴

アンサーソングを書かずにはいられない

2019/11/15
note

亡くなったHagex師と最後に話したのは……

 だからこそ、多くの女性執筆者たちがネットで現れては、一定の期間で消耗し、飽きられ、消えていく中で、いまなおはあちゅうさんはネット民から愛される存在であり続けるのであって、それはひとえに書き手としての才能だと思うんですよね。

 ことあるごとに、必ず何かをやらかし、話題になり、賛同も批判もたくさんやってきて、ネットではあちゅうさんがブチ切れているのを見て、みんな喜ぶ。ときとして大爆発して黒煙が上がり、信者ともども爆風に煽られてはあちゅうさんが天高く舞い上がり、BuzzFeedで記事にされる。そしてそれは、「原作や前作を知らなくても、このコンテンツは楽しめます」というぐらいに、1話完結で楽しめるのです。

 やはり、はあちゅうさんには命ある限り思いの丈をぶつけて欲しいし、理想とする、金字塔となるような「作品」を手がけてもらいたいと願っています。それは、亡くなったHagex師と、かの残念なことになる10日ほど前、果たせなかった彼の独立相談の話を肴に酒を飲んだ際に出たはあちゅう論の核心でありました。

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自身を教祖とし、その教典と信者をコンテンツとするも、実際にはさらにその外側を取り囲んでいるモヒカンも含めた全体が「はあちゅう」というコンテンツなのであった(イラスト:4.5P)

 悲しいことではあるけれど、「あれだけ面白いと、人生退屈しなくて楽しいだろうなあ」って言いながら、彼は神の御許へ旅立っていきました。そんな彼を殺した人の初公判はありましたが、その犯した罪は許せなくても、人として、幸あれと祈ります。頭を掻きむしりたいほど残念ではあるけれど、彼の生き様を胸に焼き付けて、私たちはこの世を退屈しないように生きていかなければならない。

 いまでも、最後に彼と訪れた月島の居酒屋の近くを通るたび、ネット談義に花を咲かせた彼の姿を思い出して血が引く思いをします。まだ、変な帽子をかぶってそこに座っているかのような。悲しいけれど、仕方がない。低能先生にも何か救いの手がなかったのか、いまでも思うことはたくさんあります。

大きなお世話だろうけれど……

 確かに、ここに、ネットを通じていろんな感情を交錯させ、同じ時間を過ごしたぬくもりが伝わっていた。はあちゅうさんからすれば、目障りなアンチにすぎない私たちも、面白いからウォッチし、限りある人生の時間を使って意味を捉え、読み解き、そこから面白さをどう表現しようか話し合ってきた。大きなお世話だろうけれど、より広い意味で、そのままあけっぴろげに人生をコンテンツにするはあちゅうさんが、脱税を除いて好きなんだろうなと。

©iStock.com

 そして、最後になりますが、改めてはあちゅうさんご出産おめでとうございます。人の親となることは、私も人生に大きな転機をもたらし、新たな時の扉を開く旅の始まりを意味しました。それまでの乾き切った独身時代は何だったんだろうと振り返る余裕も少しはできて、慌ただしいながらも幸せな日々を家内と子どもたちで作り上げて毎日生き抜いています。小さな命を預かる一人の母親として、はあちゅうさんらしい独特で、それでいて共感の持てるいろんな書き込みが精力的に今後も続くことを期待してやみません。

 人間模様も含めて、社会のキャンバスに描かれた人生全部コンテンツがある以上、その作品が続くまで、与えられた命のある限り楽しんでいきたいと思います。

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「血液クレンジング」をめぐる、はあちゅうさんと物好きの終わらない宴

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