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黄斑へのダメージを軽減する「ルテイン」とは?

尾花医師

「医療」と「健康食品」は仲が悪い。医療者が健康食品を毛嫌いする理由は、健康食品そのものを嫌うというよりは、あたかも病気が治るかのような表現で売ろうとする一部の悪質な業者への嫌悪感がそうさせるようだ。

 そんな中、医師が、というより医療界が積極的に摂取を勧めるサプリメントがある。「黄斑変性」という、放置すれば失明に至る目の病気の予防に役立つというサプリメント。その主成分は「ルテイン」という天然色素成分だ。そのメカニズムを、総合病院聖隷浜松病院眼科部長の尾花明医師に訊ねた。

「黄斑はその名の通り黄色いのですが、この黄色の正体が“黄斑色素”という色素成分。目に入ってきたブルーライトなどの光に対して、この黄斑色素が作用することで黄斑の酸化が進まないようにできているのです」

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 つまり、モノを見るためには光は大事だが、そのために黄斑は一定の犠牲を強いられ、そのダメージを少しでも小さくするために存在するのが黄斑色素――ということのようだ。

 黄斑色素は、生まれたばかりの赤ちゃんの目にはわずかしか存在しない。母乳や食事などで少しずつ蓄えられていく。こうして、体内に黄斑色素を作っていく上で、最も重要な成分となるのがルテインなのだ。

「ルテイン」はカロテノイドの一種で、さらに1000を超える種類があり、ニンジンなどに含まれるβカロテンや、トマトに含まれるリコペンなどが有名だ。

 そんな中でルテインは、体の中でも特に「目」に多く存在する色素。自然界では緑黄色野菜や卵黄などに含まれているが、とりわけ豊富に含んでいるのがホウレンソウとケールなのだ。黄斑色素にはルテインの他に「ゼアキサンチン」という色素もあって、これがルテインと一緒に働いて神経細胞を守っている。ゼアキサンチンはコーンやパプリカに多く含まれている。

©iStock.com

「ホウレンソウなら1日当たり2/3束を食べると、必要量のルテインが摂取できます。ケールだと“青汁”が有名ですが、私が知るところでは、青汁は商品によってルテインの含有量にばらつきがある。青汁を飲んでいるから安心、とは言い切れないかもしれません」(尾花医師、以下同)

すでに黄斑変性になっている人はより効率的に

 まだ黄斑変性のない人が、予防のためにホウレンソウを積極的に摂るのはいいことだ。しかし、すでに病気の兆候がある人は、より効率的にルテインを摂取する必要がある。そこでサプリメントの利用が提唱されるようになっていったのだ。

「片方の目が加齢黄斑変性でもう片方が黄斑変性の前駆病変(前段階)の人、あるいは両方の目が黄斑変性の前駆病変の人にルテインのサプリメントが有効、というエビデンス(科学的根拠)があります。ただし、すでに黄斑変性になっている人に対する治療効果という点でのエビデンスはない。だから医薬品ではなくサプリメントなのです。一応の販売基準があって、眼科クリニックでは窓口で、病院では院内の売店でのみ販売が許されている。似たような商品がドラッグストアでも売られていますが……」

 繰り返すが、このサプリには治療効果は認められていない。あくまで予防が目的の商品なのだが、「すでに黄斑変性になっている人にも、理論的に考えると何らかの効果があるはず。飲んでおいて損になることはない」と尾花医師はいう。

「それより……」

 と尾花医師は続ける。

「スマホで『文春オンライン』を読んでいる人が、将来の黄斑変性を予防するのであれば、サプリよりも普段の食事で野菜を摂取するほうが望ましい」