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アスペルガーの人には「具体的に伝える」

「では、どうしたらうまく付き合うことができるのか。まずは、彼らの特性を理解することが必要です。

 アスペルガーの人は、記憶を写真のような画像で覚えていることが多く、時間経過で物事を考えていきません。人の気持ちを思いやることができず、相手の人がなにを考えているのか分からないので、自分がどうしたらよいか分からないことが多くあります。

 ある患者さんは『世の中は舞台の上で芝居が行われているようなもの。神様がストーリーを書いて演出しているのを自分は見ているだけ』と表現したのですが、舞台上のことだから、相手が斬られていても痛みがわからないし、気持ちも理解できないのです。

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 この子どもは「今日から僕は舞台に上がります」といって友達と積極的につきあうようになりました。たくさん失敗もしましたが、私は彼のことをずっと応援しています。

 アスペルガーの人とうまくつきあうには、この特徴を逆手に取って、ト書きを書いて渡すこと。どういう情景なのか説明すること、どんな気持ちなのか説明することが彼らへのサポートになります。

 アスペルガーの人に『察してほしい』は通用しません。なるべく具体的に『こうだからこうしてください』と伝えるのです」

アスペルガーが原因で夫婦喧嘩する理由

©iStock.com

「旦那さんがアスペルガーのご夫婦の話ですが、結婚する際に奥さんが『私は誕生日が母の日と近いから、これから誕生日プレゼントはカーネーションの花束でいいわ』と言ったそうです。

 すると旦那さんはスーパーで売っているカーネーション1本をビニール袋に入れたまま『ふん』と言って渡しました。

 奥さんはスーパーで売れ残りのカーネーションを買ってきたんだと思い、自分の価値をこのカーネーションになぞらえて悲しくなったそうです。

 しかし旦那さんは『誕生日にカーネーションが欲しいと言ったからその通りにした』と悪気は全くありません。高いカーネーションの花束とスーパーで売れ残ったようなのカーネーションの花束とに差を感じないわけですから。それで合っていると思っているのです。

 自分の趣味がカーネーションであればもちろん価値の差は認めることはできます。

 だから、もしすてきな、自分が愛を感じる花束が欲しい場合は『日比谷花壇の3500円くらいの、少しかわいいカゴに入ったものをくれると嬉しいな』とより具体的に伝えればよかったのです。

 また、アスペルガーの人は切り替えが下手なので、ある話をしているときに急に違う話を切り出すとフリーズしてしまいます。同時に二つのことをすることも苦手です。

 アスペルガーの旦那さんを持つ奥さんにはいつも、旦那さんが家に帰ってきた途端、子どもの話などをして判断を仰ごうと思っても即答は期待しないでくださいと伝えています。

 会社モードの頭と家庭モードの頭とは価値観が全く違うからです。冷徹客観的、利益第一、即決即断の会社の頭では家庭生活の判断ができないのは当然だと思いませんか。

 会社頭を家庭頭にきりかえる時間を意識して取ること、時間は15分ぐらいがよいでしょうか。私は、30分は必要だと思うのですが、そこまで待ってあげるほど、現在の家庭生活はのんびりしていないでしょう。

 簡単な報告をすることから始め、重要な相談をする場合にはパワーポイントなどで資料を作って渡しておくなどしておき、時間のあるときに返事をちょうだいという余裕を持ちましょう」