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■そもそもオーバーブッキングとは最悪なのか、それともラッキーなのか?

 今回の報道では、無理矢理引きずりだされる姿から、オーバーブッキング=最悪という印象が強いが、翌日のフライトに振り替えを承諾した乗客に対して、最終的に1000ドル(約10万8800円)の補償金+ホテル代という条件が提示された。翌日仕事なのでどうしても休めない人にとってオーバーブッキングは最悪だが、予定に融通がきく人にとってはむしろ福音といえる。

 たとえば、以下のリンク先にはTBSアナウンサーの安住紳一郎氏が、日本の国内線で1万円を出すことを条件に搭乗を辞退する人を募集したアナウンスが行われてから30~45秒後には人が殺到し、締めきりになる情景を描写している。

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安住紳一郎が語る 空港で人々を動揺させる館内放送と対処方法
http://miyearnzzlabo.com/archives/21443

 なかには、こうしたボランティアに名乗り出ることでバウチャーや金銭をゲットすることを狙い、最初からオーバーブッキングが起きそうな便に予約を入れる強者もいるほどなのだ。

 こうしたことから、オーバーブッキングで修羅場になることはきわめてレアケースである。今回のケースについていえば、補償金は最大1350ドルまで引き上げられたので、さらに金額を上げれば、ボランティアに名乗り出る人がいたかもしれない。

■なぜオーバーブッキングをなくすことができないのか

 航空会社が高額の補償金を出さなければならないにもかかわらず、なぜオーバーブッキングはなくならないのだろうか。

 航空会社はつねに実際の席数よりも多くの予約を入れる。これは、実際にはノーショーといって搭乗しない客が一定の割合で存在するからだ。

 もちろん大手航空会社は、天候や時刻、乗継などを含めたビッグデータにもとづき、どのくらい重複予約を入れるのかを判断する。以下の記事では、スーパーボウルなどのイベント時、感謝祭、クリスマスなどには重複予約をあまりとらないことや、補償のバウチャーが航空会社にとってはとるに足らないことなどが明らかにされている。

航空会社がオーバーブッキングする理由―統計専門家に聞いてみた
http://jp.techcrunch.com/2017/04/12/20170411overbooking/

 しかし、いくらビッグデータにもとづくといっても、実際はふたを開けてみないとわからないことも多い。航空会社によっては、ぎりぎりまで多めに予約を入れる傾向がある。そうすれば搭乗率は上がり、収益性が高まるが、代わりにオーバーブッキングは増える。

 別の航空会社は安全策をとって予約をぎりぎりまでは入れない。そうするとオーバーブッキングのリスクは減少する。その代わりに搭乗率は下がり、航空会社の収益性は低下する。いずれはまわりまわって我々乗客に運賃の値上げという形で降りかかってくる。

 前述したオーバーブッキングでの積み残しの可能性についていえば、アメリカの航空会社は日本の航空会社よりも3倍以上積み残しがある(アメリカでは1万人あたり0.75人、日本では0.24人)。

 これは、それだけアメリカの航空会社が多めの予約をとっているか、日本人が従順で、補償金を提示されたらあっさり引き下がるか、そのどちらかといえる。あるいはどちらでもないのかもしれない。