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子どもへの性加害は「平均週2~3回」小児性犯罪者のすさまじい実態

大森榎本クリニック・斉藤章佳(あきよし)さんインタビュー

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――自らの行動を“性加害”と捉えていないとは、どういうことでしょう。

斉藤 日本では刑法上、13歳未満の子どもとの性交は、同意の有無に関わらず犯罪です。小児性犯罪者も、子どもとの性的接触が犯罪になることは分かっています。それでも、子どもと性交渉がしたい。では、どうするか。彼らは、自分にとって都合のいい現実の捉え方で、子どもへ性加害したいという欲求を正当化しようとするんですね。

 こうした「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」を「認知のゆがみ」と呼びます。

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 小児性犯罪者には多種多様な認知のゆがみが見られるのですが、よく見られるのは、「愛し合っているので、セックスすることは当然だ」「いずれ経験することを教えてあげているのだから、これは『性教育』だ」「セックスしたい子どもだっている」「子どものほうが誘ってきた」あたりでしょうか。

――なるほど。そう思い込んでしまえば、罪悪感なく加害できてしまう。

斉藤 似たような認知のゆがみは性犯罪者全般に見られるものなのですが、小児性犯罪者特有だと感じるのは「飼育欲」ですね。

――「飼育欲」、耳慣れない言葉です。

斉藤 彼らの言葉を借りると、小学校の校庭のウサギ小屋でウサギを飼ったりしますよね。子どもに対して、あのウサギのようなイメージを抱くらしいんです。ものすごく弱いペット、対象の生殺与奪を自分が握っているという感覚。もう一つ、小児性犯罪者特有の言説で「騒がれたら、殺してしまえばいいと思った」というものがあるのですが、この考え方も、この感覚と密接に関わっているようです。

事件化されない「暗数」は加害者1人あたり約1000回

――逮捕をきっかけに来所するということは、それまで捕まらずに加害をしていたケースもある、ということでしょうか。

斉藤 むしろ、子どもに対する性的加害で、事件化するのは氷山の一角と捉えるべきです。強制性交等罪にあたる口腔性交や肛門性交、膣内性交のほか、比較的接触率が低い部類の加害であるズボンを脱がせて写真を撮る、下着に手を入れる、すれ違いざまに触る、露出するといった行動も含めて「子どもへの性的接触」とし、プログラムの参加者にその頻度を聞いたところ、平均週2~3回やっていた、という結果が出ました。

 初めての加害行為から、当クリニックにつながる平均期間って、痴漢だと8年、盗撮だと7.2年なんですよ。しかし、ペドフィリアの場合は平均14年で、治療につながるまで一番長くかかります。週2~3回を14年間続けると、犯罪として認知されなかった「暗数」が、1人あたり1000回は越える計算になりますね。

――すさまじい数です。

斉藤 成人に比べ、声を上げにくい子どもを狙っているため、他の性犯罪に比べても長い期間捕まらずに加害を繰り返す傾向があります。