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借金、自殺、差し押さえ……大島てるが教える「事故物件を落札してしまった業者の不幸」

事故物件サイト運営人が語る“競売物件の悲劇” #2

2020/02/29
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「ここは事故物件です」と嘘をつく人たち

 たとえば、入居者が「5年前に父がこの部屋で自殺しました」と言えばそのまま、隣の住人が「10年前にお子さんが自殺したそうですよ」と言えばそのまま、物件情報として記載されてしまうのです。執行官によっては警察に照会するなど、一応裏を取ろうとする人もいますが、そこで警察が情報を開示してくれるかは、ケースバイケースです。

©iStock.com

 すると、これを利用して、嘘を言う人も出てきます。家が差し押さえられて、競売にかけられることになった。しかし、落札者が一人も現れなければ、立退きを迫られることもないだろう……。そう考えて、あえて「ここは事故物件です」と、執行官に嘘をつくのです。

「3年前に亡くなった母は、実は自殺で、リビングで首を吊って死にました」などと、あたかもその家が“曰く付き”であるかのようにして、落札を避けようとするのです。

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家を取られてもなお、借金が残ってしまう……

 しかし、これは一種のギャンブルです。仮に落札者が現れた場合、「事故物件である」と嘘をついたことで、売却額が数割程度安くなってしまうからです。そんな嘘をつかなければ、相場通りの価格で落札され、借金が帳消しになったはずなのに、下手な嘘をついたために、家を取られてもなお、借金が残ってしまった……などという事態も招きかねません。

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 このように、事故物件と競売物件が交わる場所には、多くの“悲劇”が存在します。ちなみに、裁判所が差し押さえた競売物件の情報は、「BIT(http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/)」というサイトに、まとめて掲載されています。

 各家庭の生活感溢れる生々しい写真などが載っていて、初めて見る方は少し驚くかもしれません。私も事故物件の情報源の1つとして、日頃からよくチェックしているサイトです。

借金、自殺、差し押さえ……大島てるが教える「事故物件を落札してしまった業者の不幸」

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