「もう、えらいこっちゃ。売上げズタボロや。正直やってられんわ」

 私を前にして関西のある有力ホテルの社長がため息交じりにつぶやいた。

 あたりまえである。昨年12月以降、中国武漢市で猛威を振るった新型コロナウイルスを原因とした急性肺炎患者の激増は、その後日本をはじめとした東アジアからヨーロッパ、アメリカなど全世界に猛烈な勢いで拡大。歯止めがかからない状況に陥っている。

ADVERTISEMENT

©AFLO

 この影響は当然のことながら、今までインバウンド需要を含めて「我が世の春」を謳歌してきたホテルなどの宿泊業界に大打撃を及ぼしつつある。

京都市内のホテル稼働率は30%台に?

 京都、大阪など急増するインバウンド需要で潤ってきたエリアは特に深刻な状態だ。京都は例年であれば2月は、春節を迎えた中国人観光客で街中が溢れかえるのだが、市内は閑散とし、ひところ「観光公害」とまで揶揄された光景は影を潜めている。

 ホテル関係者によれば、京都市内のホテル稼働率は今になって下がったのではなく、実は昨年10月の消費増税時点からじりじりと低下をはじめていた。とりわけインバウンドによる席巻に嫌気していた日本人観光客に消費増税が追い打ちをかける結果となって下がり始めていた稼働率に、今回のコロナウイルスがさらに追い打ちをかけたのだからひとたまりもない。

 この状況を考えると、京都市内の主要ホテルの稼働率は2月で60%台に、現時点での予約状況からみると3月の稼働率は30%台に落ち込むのではないかというのが多くのホテル関係者の予測だ。

©iStock.com

 3月は春休みで国内観光客も増加する季節。またそうした観光客を当て込んだイベント関係者の宿泊も数多く見込まれる季節に、イベント自粛を含めた宿泊需要の激減は大いなる懸念材料だ。

宿泊客の9割以上がインバウンドだったホテルも

 大阪も深刻だ。大阪には宴会場を持つシティホテルが数多くあるが、インバウンドなどの宿泊客のキャンセルが相次ぐだけでなく、予約されていた宴会の多くがキャンセルの憂き目をみている。春は学校関係の卒業謝恩パーティーや、企業の人事異動発表に伴う就任発表や歓送迎会等が目白押しだ。加えて春の婚礼シーズンを迎えるのに、規模の縮小や婚礼そのものの延期まで出始めている。 

 とりわけ宿泊で大打撃を受けているのがミナミ界隈のホテルだ。道頓堀を中心にインバウンドだらけであったのが、街からその姿が消滅。実はミナミのホテルの多くは宿泊客の大半がインバウンド客。中には9割以上がインバウンドというホテルもある。閑古鳥が鳴いている様子は容易に想像できる。