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観光列車の新手法「上下分離」方式とは

 日曜日の「イタリアン列車」はいすみ鉄道が企画し、JTBに業務委託している。これに対して、土曜日の「いすみ酒BAR列車」は日本旅行がプロデュースする。いすみ鉄道は列車の運行業務に専念し、観光列車に関する募集、販売、進行のすべては日本旅行が担当する。ツアー料金は9,800円だ。

いすみ鉄道の社長、古竹孝一さん。香川県のタクシー会社、日新タクシーとグループ企業の代表も務める。「月のうち半分はいすみ鉄道に勤務しています」

 日本旅行は2019年秋~冬にもいすみ鉄道でフレンチのランチバスケットを提供する「おとなのピクニック」列車を手がけていた。こんどはその和食版である。今回の企画の背景には昨年の台風被害があった。千葉県には魅力的な酒蔵が数多くある。しかし、その多くが被災していた。そこで、千葉県の復興を酒蔵と食から始めよう、となった。

 もうひとつ、日本旅行の強みは「観光列車の上下分離方式」ともいえるビジネスモデルだ。地方の鉄道会社は経営状況が厳しく、観光列車で活性化を図ろうとしても、観光列車開催に必要な旅行業の手続きや専任の人員を用意できない。そこで、鉄道会社には運行に専念してもらい、観光列車の催行は日本旅行が一括して引き受ける。

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ローカル鉄道が観光列車に参入しやすい

 この手法を初めて採用した観光列車が、道南いさりび鉄道の「ながまれ海峡号」だ。道南いさりび鉄道は運行ダイヤ作成と当日の運行を担当し、日本旅行と沿線の人々が協力して、旅の演出や料理を手がける。2016年には鉄道企画旅行のコンテスト「鉄旅オブザイヤー」でグランプリを獲得した。この手法を使えば、ローカル鉄道が観光列車に参入しやすい。

 もっとも、同様の手法で、JTBが平成筑豊鉄道「ことこと列車」を開催するなどライバルも増えた。「上下分離方式」で日本は観光列車大国になるだろう。乗り鉄、呑み鉄としては大歓迎。観光列車がたくさんあるほど選ぶ楽しみもある。

いすみ鉄道がふだん運行している黄色いディーゼルカー。新しいだけに、国鉄時代のディーゼルカーより乗り心地がいい。乗り心地重視なら黄色のディーゼルカーで運行される5月上旬までが狙い目。昭和顔のキハに乗りたければ5月の運行再開を待とう。

 選べる楽しさといえば、いすみ鉄道は土曜日に日本旅行、日曜日にJTBの観光列車が走る。新たな酒、新たな味。いすみ鉄道は、千葉の魅力を再発見させてくれるローカル鉄道になった。

写真=杉山淳一