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“性暴力”広河隆一氏が設立した“人権団体” 大物写真家たちはなぜ守ろうとするのか

2020/04/28

genre : ニュース, 社会

協会設立の“意図”とは?

 そもそも広河氏は「日本フォトジャーナリズム協会」で何をしようとしていたのか。

 経営難や健康問題などを理由に「DAYS JAPAN」の休刊を発表した際、広河氏はこう宣言していた。

「世界的なフォトジャーナリズムのコンテストとなった『DAYS国際フォトジャーナリズム大賞』については、非営利の『一般財団法人日本フォトジャーナリズム協会』を設立し、1年間の休止期間の後、ボランティアの方々の手で2019年秋の募集開始から再開したいと考えています」(DAYS JAPAN 2019年1月号)

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 同協会で写真賞をやっていく考えだったのだ。

「DAYS JAPAN」2019年1月号

 この「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」に、広河氏は強い思い入れがあった。多くの国々から作品が寄せられると誇らしげに言い、オランダの「ワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)」や米国の「ピュリツァー賞」と肩を並べるかのように語ることもあった(現実には国内外の主要メディアの多くはDAYSの賞を取り上げなかった)。

 たしかに、先細りが進む報道写真界において、賞金を出す写真コンテストを開催してきたことには意義があったと思う。励みに感じたフォトジャーナリストもいただろう。

 ただ、広河氏の同賞への執着は、ジャーナリズムに貢献したいという思いよりも、自分が創設し審査員を務める写真賞の価値を高めることで、自らの評価も高めようとの意識が大きかったように思う(彼の自己顕示欲の強さについては、「デイズジャパン」検証委員会も「自分の業績を誇ったり評価にこだわる自意識過剰な態度があった」と指摘している)。

 また、同賞には多くのボランティアが関わっていた。広河氏にとって同賞の開催は、若い女性たちと知り合う機会でもあった。

 なんとかして同賞を続けたい。広河氏がその思いでつくったのが「日本フォトジャーナリズム協会」だった。

 驚いたことに、代表理事の内堀氏は、広河氏が同賞を引き継ぐために同協会をつくると公言していたことを知らなかった。その経緯を認識せず、「協会と広河氏は無関係」と主張していたのだった。

 2019年秋に再開するとしていた同賞は結局、開催されなかった。どこからも誰からも、何の告知も出されなかった。

検証委員会も疑問視

「日本フォトジャーナリズム協会」の“怪しさ”については、「デイズジャパン」が設置した検証委員会も、昨年末に出した報告書で言及している。

 検証委は調査中に、同協会で役員の総入れ替えがあったことを認識。後任の役員が誰なのか、広河氏に聞いた。すると広河氏は「質問に答えようとせず、『日本写真家協会の方々にお願いした』としか述べなかった」。

 さらに、検証委は昨年12月に内堀氏にヒアリングをする予定だったが、急きょキャンセルされた。文書での質問にも回答はなかった。内堀氏からは、「日本フォトジャーナリズム協会」と「デイズジャパン」を関連づけられるのは「とても迷惑」だと言われたという。

 この点を今回、内堀氏に確認すると、「検証委の調査は偏っていて中立ではないと感じたんです。協会を代表してあれこれしゃべるのはどうかと思って協力しませんでした」と述べた。

 検証委の報告書は、「広河氏が頑なに財団法人の新役員について検証委員会に伝えたがらなかった理由は現在も不明である」と記している。