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日本育ちでも「なぜ帰化しないの?」「日本人じゃないから当然」外国人再入国拒否、当事者への偏見

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 生活の基盤が日本にあるのに、家族が日本にいるのに入国することができないーー。新型コロナウイルスの影響で、日本に暮らす外国人が日本への入国を拒否されていることをご存知だろうか。 

 新型コロナ流行下の現在、日本国籍保持者や特別永住者は、2週間の自己隔離を前提に日本への入国が認められている。しかし、4月3日以降に出国し、入国制限国・地域(7月12日現在129か国・地域)に滞在した外国人は、永住外国人など、生活基盤を日本に置いている場合でも、一部をのぞき入国を拒否されているのだ。

 産経新聞の調査によると、G7の中でこのような措置をとっているのは日本のみだという(6月26日)。 

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 5月には、日本で暮らす外国人が再入国の確証が取れないために出国ができず、祖国で暮らす親を看取ることができなかったケースが報じられた。批判を受け、法務省は5月27日に「特段の事情がある」場合、例外的に上陸を許可すると発表。 

 しかし、「危篤状態にある親族の見舞、葬儀」「外国の医療機関での治療、出産」「外国の裁判所からの出頭の要請」など、当てはまる範囲が非常に狭い。じっさいに困っている当事者に話を聞いた。 

米国の学生ビザ報道で「本当に行き場がなくなってしまう」

 チョーヒカルさん(27)はリアルなボディペイントの作品で知られ、ファッションショーやCMなどでも活躍する現代アーティストだ。日本生まれ日本育ちだが、中国籍で、現在は米国の大学院に在籍している。3月末、新型コロナの流行を受け、大学院の授業がオンラインに切り替わった段階で日本に帰国した。   

「今後のことに不安を感じたのは、6月頃からです。8月末から大学院で対面の授業が始まるので渡米しようと考えたのですが、渡米後、日本に戻る際に上陸拒否に遭う可能性が高いことがわかってきました。 

 私自身、両国を頻繁に行き来してリスクを持ち込むことは本意ではありません。渡米したらしばらく戻れないだろうということは覚悟していました。しかし、7月になって米国政府がオンライン授業のみの留学生のビザを制限する方針を出してきた。  

 もしも米国で新型コロナの感染状況が悪化して、大学院の対面授業がまたオンラインに切り替わったら、最悪の場合、米国の滞在資格も失い、日本にも入国できない。中国で暮らしたこともないし、本当に行き場がなくなってしまうんです」 

 留学生ビザ規制については、その後米国政府が撤回すると報じられたが(7月15日)、渡米したら帰国の目処がつかない状況は変わらない。

 家族と一緒に暮らせず困っている人もいる。今年3月末まで外国で暮らしていた日本国籍のろぱひひんさん(ペンネーム)は、4月から中国籍の配偶者と日本で暮らす予定だった。