たとえば、日本の場合、日本生まれ日本育ちであっても(両親の国籍が外国籍の場合)帰化の申請ができるようになるのは20歳からです。幼少期から、偏見をぶつけられながらも『変えられないもの』としてつきあってきた国籍を、20歳になった途端『さあ、捨てなさい』と言われるのは釈然としない気持ちがある。いろいろなことを考慮して当人が決めること。当事者でない人が簡単に意見することではないと思います。
そもそも今回のツイートは日本国籍になりたいと言ったわけでもない。外国籍の人を永住権や滞在許可、様々な事情を無視して一概に拒否する、人道的配慮のない処遇についての、個人的な立場における悲しさを述べたまでです。それを『日本への攻撃』ととる人もとても多くて、不可解でした」
「私は敵ではないんです」と説明し続けるつらさ
これまであまり自身の国籍や、国籍をめぐる民族差別について語ってこなかったというチョーヒカルさんだが、最近心境の変化があったという。
「新型コロナが流行してからは、日本人の中国、ないし外国籍の人に対する差別意識がより際立つようになったと感じました。BLM(ブラック・ライヴズ・マター)をきっかけに差別に関する議論に注目が集まったことで、昔から日本に根づいている中韓への差別に言及する人がいかに少ないかを突きつけられ、失望する気持ちも正直あります。
中国や韓国にルーツを持ち、日本で生まれ育った人は、日本社会に蔓延する中国人韓国人へのネガティブなイメージを裏切らなければ、とモデル・マイノリティー(模範的な少数者)にならざるをえないところがあると思います。言うなれば、中国籍であるだけで、『私は敵ではないんです』と説明し続けなければならない。
そんな中で、当事者として差別や権利に声をあげることは本当に難しい。でも、言わなければ可視化されないので、少しずつでも言っていこうとあのツイートをしました」(同前)
チョーヒカルさんは、中長期滞在外国人一律入国拒否見直しを求める署名運動への協力を呼びかけている。
「法律や国籍で区切ることは理にかなっているように思うかもしれないけど、国籍の向こうには人がいて、そういう人たちの事情には国籍だけで切れないものがある。複雑な状況の中誰かが苦しんでいて、それを本当に『お前は違う国籍だからどうでもいい』と切り捨ててしまうような私たちでいいのでしょうか。
そういったことを少しでも考えてみてほしいと思います」(同前)