「オレはつけこんで彼女を抱こうと……いけない!」
特に印象深いのは、フジテレビ系「月曜ドラマランド」という枠で1983年に放送された「胸さわぎの放課後」というドラマです。たのきんトリオが「3年B組金八先生」(TBS系)、シブがき隊は「2年B組仙八先生」(TBS系)に出演し、なにがしか問題のある生徒を演じていたなかで、少年隊(当時はジャニーズ少年隊)が出演した「胸さわぎの放課後」は、さわやかな学園ドラマであり、高校生の男女が憧れる等身大の恋愛を描いたものでした。
本作で少年隊は日本の男の子たちが恥ずかしいものとして捉えていた「不器用でも、女性の気持ちに優しく寄り添う男子」を演じ、ジャニーズファンではない女性たちをもときめかせました。
作中、万引きの嫌疑をかけられて悩むヒロインをグッと抱きしめる……のではなく、「今、彼女は弱って自分を頼っている。そしてオレは、それにつけこんで彼女を抱こうとしている。……いけない!」とふみとどまって、本当に彼女のためになることをする。そんな、紳士で愛すべき現代の“王子さま的ジャニーズアイドル”の基本形が、ここで初めて築かれたのだと、私は考えています。
舞台プレゾンで「ジャニーさんが目指したアイドルそのもの」に
そして少年隊が後輩に残した最も大きな功績のひとつが、1986年から始まった夏の恒例ミュージカル「PLAYZONE(通称・プレゾン)」です。
ウエストサイドストーリーなどのブロードウェイミュージカルに傾倒していたジャニーさんにとって、自らが擁するタレントたちに舞台を実現させるのは長年の悲願でした。そのため、少年隊は実際にブロードウェイのミュージカルを生で鑑賞したり、マイケル・ジャクソンの代表曲「スリラー」の振付師マイケル・ピータース氏や、「THIS IS IT」の振付師トラヴィス・ペイン氏を招いた本格的な舞台の英才教育を受けています。もちろん歌唱力も徹底した指導を受けて磨き上げ、その結果、少年隊は歌も踊りも完璧な、ジャニーさんが目指したアイドルそのものに育ったのだと思います。
鍛練を重ねたパフォーマンスのお披露目の場として、デビュー翌年から毎年行われたのがプレゾンでした。年ごとに演目は異なりますが、確かな基礎に裏打ちされた演技とダンスが圧巻で、少年隊主演の23年間のうち観客動員数は約138万人を記録したそうです。そのためプレゾンはジャニーズのなかでも特にダンスに秀でた出演者が集まる伝統的なショーとして、2015年まで計30年間続くことになります。