統計的な有意差を具体的に解説する
阪神タイガースが読売巨人軍と戦ったとしましょう。本稿執筆時点、2020年7月3日の段階で、絶賛最下位の阪神(涙)と同日トップを走る巨人との伝統の一戦です。もはや伝統の一戦と呼んでいるのは関西の人だけなのかもしれませんが(涙)。
さて、第1戦、阪神勝ちました。巨人、負けました(*この物語はフィクションであり、実在のチームとは関係ない話です)。
果たして、この結果を見て「阪神は巨人より強い」と結論づけてよいでしょうか。
いいえ、そうは言えません。一回くらいの勝ちは「まぐれ勝ち」ということがあるからです。
では、第2戦。阪神、またもや勝ちました。これではどうか。
2連勝くらいでは、まだまだまぐれの可能性があるでしょう。
では、3連勝は?
両者の力に「差がない」と仮に考えてみましょう。引き分けを無視すると、阪神が勝つ確率は5割、巨人の勝つ確率も5割です。つまり、1/2と1/2です。
ということは、阪神3連勝の確率は、「1/2×1/2×1/2=1/8=0.125」です。12.5%。ま、3連勝くらいはまぐれでも起きそうな話です。
4連勝は? 同じように計算すると、6.25%です。決して奇跡的なミラクルな確率ではありません。
5連勝は??? 3.125%です。つまり、5%未満ということになります。
通常、ぼくらの領域では習慣的に(あくまで習慣的に、ですが)、「差がない」という仮定のもとでの5連勝……その確率は両者に「差がない」場合は5%未満なのですが……は「まぐれにしてはできすぎ」「まぐれじゃないだろう」と考えます。これが「統計的な有意差がある」という意味です。イエイ、やっぱ阪神、強かった(ぼくの頭の中の妄想では)。
ところが、野球というのはそんなに「勝ち」と「負け」だけで強さを判定しませんよね。
二つの差に目を向けることが大切
仮に巨人が阪神に、
25対0
のコールド勝ちをしたとしましょう(あくまで、ぼくの妄想世界の話です)。これだと、ズルをしているのでなければ、
巨人のほうが強い
と考えるのではないでしょうか。「いやいや、もう1戦やってみないと、どっちが強いかは分からん」と言うのは、そうとう、現実世界が見えていないか、極端に負け惜しみな涙目のファンだけなのではないでしょうか。
治療薬の効果は、「比較」がなければいけません。その比較は、先ほどもご紹介した、
統計的有意差があるかどうか
と、
臨床的な差があるかどうか
を見ます。統計的な「差」は「まぐれじゃないかどうか」の判定結果であり、「臨床的な差」は、さっきの「何点差で勝ったか」みたいな「差」のことです。どちらも大事な概念ですが、より重要なのは実は後者です(この点は、プロの医者ですら、ときに勘違いしています)。