ダイヤモンド・プリンセス号の告発で注目の感染症エキスパート、岩田健太郎医師(神戸大医学部教授)。

 その岩田医師の新刊のテーマは“いじめ”だ。『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』(光文社新書)の執筆にあたり〈子供のいじめは一向に減る気配がない。それはそもそも、日本社会、それも大人の社会がいじめ体質だからだ。大人の社会でいじめが普遍的で常態化しており、「世の中そんなものだ」と多くは納得すらしている。本書では、どうしたらこの悪循環を断ち切り、いじめが蔓延しない社会にできるかを提案する〉と語る。

 じつは自らもコミュ障で、いじめられっ子だったという岩田医師。同書で明かしたダイヤモンド・プリンセス号告発でも痛感した「気に入らないやつは排除する」日本社会の問題点とは?

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岩田健太郎医師(神戸大医学部教授) ©野澤亘伸

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あの日、ダイヤモンド・プリンセス号から追い出された理由

 ご存じの方も多いと思うが、新型コロナウイルス感染症の渦中、ぼくは感染拡大が起きていたクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号に入った(2020年2月18日)。船内の感染対策を最終的な目標としていた。厚生労働省の方に提案され、災害派遣医療チームのDMATの一員としてまずは船内に入り、最初は感染対策をせず、DMATのメンバーとしてDMATの仕事をし、次第に感染の方をやっていく、という手はずだった。

 ところが、入ってみると現場のDMATのリーダーに「DMATの仕事はいい、感染対策をしろ」と命じられたので、ぼくは感染対策の仕事を始めた。船内の感染対策には非常に不備が多く、それが危機的に感じられたのだ。

 ところが、このときの態度が「某氏」の目に止まり、それが気に入らない、という理由でぼくは同日内に船内から追い出されてしまった。弁明の余地すら与えられなかった。

 このあと、ぼくがYouTubeにこの顛末を英語、日本語でアップしたために、思わぬところで大騒ぎになってしまった。「海外に国内の恥をさらすな」という保守派と、政権批判の道具に使いたい層がこの騒ぎに入り込み、意図も希望もしなかった場外乱闘的議論も起きてしまった。ぼくはこれ以上議論が明後日の方向に向かわぬよう動画を削除し、騒動を詫びた。

 そのために、一部ではぼくが「間違いを認めた」から謝罪したと勘違いしたようだが、そういう話ではない。