以降も、’80年代中盤以降のロボットアニメのヒット作『戦え! 超ロボット生命体トランスフォーマー』('85年)や昭和『ガンダム』シリーズ終了後のサンライズの意欲作『機甲戦記ドラグナー』('87年)、刻(とき)のアイドル・田村英里子さんをフィーチャーした実験的アイドルアニメ『アイドル伝説えり子』('89年)の主題歌等々を担当。特に『えり子』では、’90年代への架け橋的なアイドルソングを開発。自ら新境地を開拓していた。
また、『サザエさん』に並ぶフジテレビの大ヒットアニメ『ちびまる子ちゃん』の映画版『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』(’92年)やシュールなギャグアニメ『はれときどきぶた』(’98年)などにも楽曲を提供。自身のアニメの原点である、ギャグ・ホームコメディアニメのジャンルでも’90年代的サウンドを創出できる実力の程を見せつけていた。
2000年代には人気声優にも楽曲を提供
2000年代に入ってからも、人気声優・竹達彩奈さん(『デンキ街の本屋さん』['14年]主題歌「齧りかけの林檎」)や飯田里穂さん(『デジモンユニバース アプリモンスターズ』['16年]副主題歌「青い炎シンドローム」)等に積極的に楽曲を提供。もうなんというか、加齢知らずというか不滅といおうか、その第一線・現役ぶりにはただひたすら脱帽する他はなかった。
じつは筒美さんは、日本のポップス・歌謡界を支え続けるのと同時に、ジャパニメーション歌謡も支え続けていたのだ。
かつて、冨田勲さんや川口真さん、都倉俊一さん、平尾昌晃さん、そして師匠たるすぎやまこういちさん、宮川泰さんら日本のポップス界をリードする大作曲家たちは、同時に常にアニメソング界をもリードしていた。もちろん渡辺岳夫さんや渡辺宙明さん、菊池俊輔さんらアニソン界の偉大な重鎮たちが大黒柱にはなっていたが、筒美さんのような他ジャンルのオーソリティーたちが要所要所でその才能を提供していた事実は大きい。そのことが今日のジャパニメーションの世界的クオリティの根拠の一翼を担っていたことは確かだ。
アニメ好きの筆者にとって、筒美京平作品のベストワンは、誰がなんと言おうと「風のノー・リプライ」だ。筆者同様、人それぞれのマイベスト筒美サウンドを、繰り返し聞いて故人を偲んで欲しい。作品同様、歌も永遠なのだから。