人気作とリアルスポーツとの関連とは?
他にも振り返ってみれば、競馬漫画『みどりのマキバオー』が連載されていた1997年にはサニーブライアンやマヤノトップガンら人気馬の活躍もあり、JRAが史上最高売上げとなる4兆円超えを記録しているし、相撲をテーマにした『火ノ丸相撲』が連載中だった2017年は稀勢の里が19年ぶりに日本人横綱に昇進。大相撲人気が最高潮に達した時でもあった。
そう、人気作のヒットの背景には、それと前後したリアルスポーツの隆盛もあるのである。
だからこそ、いまその人気漫画の1丁目1番地ともいうべき『ジャンプ』からスポーツ漫画が消えたという事実は、意外にコワい現実を示唆している。
つまり、少年少女が“憧れるスポーツ競技”はどこへいったのか?――ということだ。
これまで述べたように、漫画の影響力というのは特に若年層には非常に大きく、ある意味でリアルの競技選手以上に少年・少女たちに“憧れ”を抱かせる。
そして彼らはそういった“憧れ”からスタートして、競技を始めるのだ。もしいま、その原点が無くなっているとするならば、それは由々しき事態なのではないだろうか。
実は“鬼門”のスポーツ漫画というジャンル
もちろんそこには単純な競技そのものの人気以外にもスポーツ漫画というジャンルの持つ特性もあるという。
「スポーツ漫画というのは人気作品が多いイメージがあるかもしれませんが、実は漫画編集者にとっては“鬼門”のジャンルなんです。簡単に言うと、決して売れ線の分野ではない。90年代以降だと単巻で初版100万部を超えた作品は『SLAM DUNK』と『黒子のバスケ』、『H2』しかなく、それだけハードルが高いジャンルと言えるんです。昨今出版不況が囁かれるなかで、メガヒットを出しやすいファンタジーなどのジャンルの作品に目が向きやすくなるのはしかたないことなのかもしれません」(同前)