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自らが輝くようになる衛星都市

 人々が郊外に張り付いて都心にでてこないようになれば、これまでは都心に集中していた飲食や物販店も都心から、人のいる郊外へと拡散していくだろう。形態も都心にあってサラリーマンの飲み会や接待用の店などではなく、ファミリーや友達同士が気楽に遊べる形態のものに進化していくだろう。人々の夜の過ごし方も会社中心から家族や地域内での友達、趣味の仲間などにシフトしていくからだ。

 首都圏であれば、たとえば立川、八王子、相模原、本厚木、海老名、藤沢、船橋、柏、松戸、浦和、大宮、所沢、飯能といった街が脚光を浴びるようになるかもしれない。

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 たとえば、立川は交通利便性のみならず、百貨店などの大型商業施設や文化施設が集積した住みやすい街だ。山好きなら八王子まで足を延ばしてもよいだろう。
藤沢ならば毎朝、湘南海岸でサーフィンをしながらテレワークもできる。所沢にできたKADOKAWAのサクラタウンで、おたく文化に浸りながら生活するのもよいかもしれない。

 学校教育重視なら浦和という選択肢もある。このように自分たちの置かれた環境や人生のステージ、趣味趣向に応じた住む街の選択肢が大幅に増えるのがこれからの社会だ。

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 惑星は太陽系にあって、太陽を中心に回っているが、星そのものが光ることはなく、太陽の光によって輝く。地球も金星も自らが輝くことはないのである。いっぽうで恒星は自らが輝く星を指す。太陽はこの恒星にあたる。

 これまでの衛星都市は、東京という大きな太陽のまわりにあってベッドタウンとしての役割を持った惑星であった。だが、働くという場を持ち、その街だけで一日が完結するような機能を持ち合わせるようになれば、働き方がおおいに変化した人々が好んでその街ですごすようになる。つまりこれまでの衛星都市は自らが輝く恒星都市になるのだ。

 コロナ禍はやっかいな事象ではあるが、こんな側面でも日本の社会のあり方を大きく変えようとしている。そしてその世界は新しい日本人のライフスタイルを引き出していくことになりそうだ。それはそれで悪くない世の中になるのではないだろうか。