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なぜ「春菊天」は関東の大衆そば屋にしかない? みんなの知らない“春菊天そば”の世界

2020/12/08
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春菊天そばのアラカルト

 それでは、私が近年食べ歩いた中から、印象的な春菊天そばをご紹介しよう。

「手のひらタイプ」

 まず、「手のひらタイプ」の春菊天そば。

 秋葉原駅構内にある「新田毎」の春菊天はパリッと大きく開いた揚げ姿が壮観である。

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 最近、頻繁に訪問している有楽町駅近くの帝劇ビル地下2階の「都そば」もこのタイプ。収穫が減る夏の暑い時期は店頭から消える日もあるが、それ以外はいつも上位人気メニューとなっているそうだ。午前10時頃に行けば、お姐さん達が春菊をザクっと包丁で切り、天ぷらを揚げている場面によく遭遇する。

秋葉原駅構内にある「新田毎」の春菊天はパリッと大きい
有楽町駅近くの帝劇ビル地下2階「都そば」の春菊天はぱっと開いた形

かき揚げ「カリっとタイプ」

 さて次はかき揚げ「カリっとタイプ」。

 港区新橋のニュー新橋ビルにある「丹波屋」はこのタイプの代表といっていいだろう。

 ここが不思議なのは真夏の時期にもちゃんと仕入れてあり、メニュー落ちがないことである。露地物の春菊の仕入れ先を確保しているようだ。

 昼前に行けば、深緑の春菊天がバットに並んでいる。この横で大将が必死に春菊天を揚げ続けている。「揚げても揚げてもすぐなくなるんだよ」と嬉しいボヤキも聞くことができる。

 千代田区東神田にある「そば千」などはこのタイプである。

 亀有の「鈴しげ」の春菊天もこのタイプで、揚げ具合もからっとしていて、軽くて秀逸な味である。

 春菊の香りがぎゅっと詰まっていて、どちらも捨てがたい魅力がある。

港区新橋のニュー新橋ビルにある「丹波屋」
カリっとした春菊天は一番人気
揚げてもすぐなくなる人気メニューだ

 

亀有の「鈴しげ」の春菊天はかき揚げ風でカリっと軽く揚がっている