この年末年始は帰省するかどうかで、多くの人が頭を悩ませたはずだ。
新型コロナウイルス感染症が流行してからというもの、ゴールデンウィークやお盆の帰省は自粛を求められた。せめて正月だけでも故郷に帰りたいと思うのが人情だ。しかし、第3波の感染拡大は収まる気配がない。感染力の強いウイルスの変異種まで出現した。
そうした中で各都道府県の知事の「メッセージ」は分かれた。大都市側では「帰省しないで」と訴える知事が多かったが、帰省先となる地方の中には「自粛までは求めない」とする知事もいたのだ。いったい、どちらの考えを尊重すればいいのか――。
“鹿児島出身の東京在住者”はどう判断する?
「何よりも外出を自粛することです。もちろん帰省が含まれるわけでございまして、『家族でステイホームして(家にいて)ください』と申し上げている」
東京都の小池百合子知事は、2020年12月21日の記者会見でこう述べた。新規感染者が増えるばかりで、医療現場の疲弊が限界に近づいていたのを受けての発言だった。
一方、鹿児島県の塩田康一知事は帰省の自粛まで求めなかった。「鹿児島県の感染状況は、まだ県民の行動を制限する段階にありません。人にはそれぞれ事情もあるので、感染拡大地域からの帰省については、体調管理をしっかりしたうえで、基本的な感染防止対策を徹底し、混雑する時期を避けるなどして行ってくださいと訴えています」と県の担当者が説明する。
東京には東京の考えがある。鹿児島にも鹿児島の考えがある。それぞれ正しいのかもしれない。だが、鹿児島出身の東京在住者はどう判断したらいいのか。
「慎重に検討してください」というメッセージ
秋田県の佐竹敬久知事も「こちらに帰ってすぐに飲み歩いたり、人の多い集まりに出たりすることは控えてほしい」とは述べたものの、帰省の自粛までは求めなかった。やはり「他県に比べれば医療体制が比較的厳しくない」(県担当者)のが理由だ。
ならば、東京在住の秋田出身者はどうすべきか。県の担当者に尋ねると、「お住まいの地域の知事に従ってください」と言われた。「居住地の知事に従え」というメッセージはこれまでに発信されていない。県のホームページには「首都圏、中京圏、関西圏との往来は、できるだけ避けるようお願いします」とは書かれているが、これでそこまで理解するのは少し難しいような気もする。
多くの県の態度は、別の意味で分かりにくい。「帰省は慎重に検討してください」とするにとどめているからだ。
「これでは、分かりにくすぎる」という声が県民から寄せられたため、具体的な都道府県名を挙げて往来の自粛要請をし始めた県もある。熊本県だ。