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「帰省しないで」「自粛までは求めない」バラバラすぎる自治体の発信…なぜ混乱が生まれている?

2020/12/29
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14都道府県に“自粛要請”をしたが……

 政府の分科会は、都道府県ごとの感染状況を四つのステージに分けて示している。熊本県ではそのうち悪い方から2段階目の「ステージ3」以上の地区を自粛要請の対象にすることにした。ステージの判断にはいくつかの指標があり、直近1週間の陽性者数が人口10万人当たり15人以上という項目を使った。

 対象となる都道府県の一覧表は数日ごとに更新しており、熊本県が28日に発表した往来自粛リストでは、感染者が多い順に(1)東京(2)神奈川(3)広島(4)大阪(5)京都(6)埼玉(7)高知(8)愛知(9)千葉(10)兵庫(11)福岡(12)奈良(13)北海道(14)沖縄の14都道府県を挙げた。「対象地区に住んでいる出身者には、県内の親族から帰省を控えるよう伝えてほしいとお願いしています」と担当者は話す。

蒲島郁夫熊本県知事 ©AFLO

 ただ、対象となっている県では、その事実を知らない県庁もあった。例えば、高知県の担当者は「えっ、うちは熊本県から帰省の自粛対象とされているのですか」と驚いていた。

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 どうしてこのような事態になるのか。感染症対策は都道府県知事の役割ではあるが、県をまたぐような対策も単独でばらばらに決めているからだろう。都道府県で連携した発信や、政府の仲介・調整が不十分なのだ。分かりにくいだけでなく、必要な人に情報が届きにくくなっていないだろうか。

広島は「ばかたれーっ!!」ポスターが話題に

 広島県は、熊本県と同じように直近1週間の陽性者数が10万人当たり15人以上の都道府県や、知事が不要不急の外出を控えるよう訴えている地区とは、往来の自粛を呼び掛けている。

 このため広島県観光連盟は、帰省を諦めた出身者へのメッセージを書き込んだポスターを東京駅などに張り出した。

広島県観光連盟が張り出したポスター(広島県観光連盟HPより)

「当初は『帰っておいで』と呼び掛けるポスターを企画していたのですが、第3波の感染が拡大し、そのような事態ではなくなりました。広島は愛郷心の強い県です。帰省できない人の胸の内はいかばかりだろうと思いました。そうした気持ちを現すのは、広島弁の『ばかたれ』という言葉が一番ぴったりすると考え、冒頭に『ばかたれーっ』と大きく書きました」と観光連盟の担当者は話す。

 文面には「一体いつになったらみんなに安心して帰っておいでと言えるのか。本当に寂しくて、悔しい想いです。だから、今回ばかりは叫ばせてくれませんか。コロナウイルスのばかたれーっ!!わしらは負けんけえー!!!!…って。東京に暮らしている広島人のみなさん、なかなか会えんのは寂しいけれど、こっちはこんな感じで元気にやっとるよ。みなさんの帰る場所は、絶対、無くなりゃあせん。じゃけぇもうひと踏ん張り、一緒に頑張ろうや。また会えるのを、待っとるけぇ」などと書き込んだ。