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シャッター商店街で輝く「もやし1円」の「スーパー玉出」

 金網から南側は動物園前二番街で、小ぶりの飲み屋が増えてくる。昼間からかなり大きなカラオケ音が、建て付けが悪くてきちんと閉まらない戸から外へ流れ出てきている。もちろん演歌である。

 やがて左手(東側)に山王市場通商店街。ここはシャッター通り。暗い。その暗さは、汚れが溜まった暗さだ。灰色の埃も厚くなると「黒」になる。「福祉住宅あります」のビラも目立つ。

 続いて、洋品店の角を曲がると新開筋商店街。山王市場通ほどではないが、ここも暗い。ざっと4割がシャッターを閉ざしている。

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 右手(西側)に、ワンカップ120円、発泡酒100円など破格の値段の自動販売機を置く酒屋や、「もやし1円」などとタイムサービス商品のちらしをペタペタと貼った「スーパー玉出」があり、置き看板をテーブル代わりにワンカップを立ち飲み中のおっちゃんたちがたむろしている。その並びに、パチンコ屋。

近辺の人たちは“中”“外”と呼び分ける...「嘆きの壁」

 その先には、左手の空き地の奥に、5メートル近いコンクリートの壁が見える。

「汚いから壊したほうがええんやろけど、壁は誰のもんでもないから、勝手に壊されへんらしいですよ」

 と薬局の主が言う。この壁こそが、かつて飛田遊郭を“外”の世界から遮断した、通称「嘆きの壁」だ。壁が機能しなくなって久しいが、近辺の人たちは“中”“外”と呼び分けている。

この壁を越えた先はあべのハルカスなどが林立する阿倍野区 撮影/黒住周作

 界隈でひと休みしようと喫茶店に入ると、競馬新聞やスポーツ新聞を大きく開いて読みながら、コーヒーや紅茶を飲む、くたびれ感のある人たちがいるが、それはどこの下町の喫茶店でも同じだと思う。しかし、ある1軒でトイレに入った時、びっくりしたことがあった。個室の壁面に、「ここに注射針を捨てないで下さい」と注意書きが貼られていたからだ。

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さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

理津子, 井上

新潮社

2015年1月28日 発売

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