さらにCが2次団体のトップに昇格することとなれば、AにとってCは「おじさん」となり、暴力団組織の中では立場が逆転する。もし、Cが暴力団組織全体のトップ、組長になってしまうとさらに立場に開きが生まれ、Aが2次団体の組長に昇格しても、この際には親分子分の関係が新たに結ばれるため、Cのことを親分と呼ばねばならなくなる。
この幹部は、実際の運用について次のように明かす。
「こうした序列が逆転する事態は『よくあること』とまでは言わないが、たまにはある。ヤクザである以上は、このようなことがあっても受け入れなければならない。自分の組織内でも、年下の若い衆が組長となるようなことになれば、この瞬間から、それまでは若い衆だった者を兄貴と呼ばなければならない。因果なことだ」
山口組分裂抗争と「盃」という視点でみると?
暴力団組員は「盃」を交わした以上、組織ではどのような不条理も受け入れなければならない一方で、子分の立場としての意見を表明することも重要だという。
「子分としては、親分に付き従うことは当然のこと。しかし、親分が言い出したことで、どうしても納得できない、もしくは間違っているということがあれば、自分なりの意見を述べるということはある。自分が正しいと思って意見しても聞いてもらえなかったら、自分から身を引く。盃を返して、きっぱりと足を洗って辞めるということがあってしかるべきだ」(同前)
こうした暴力団特有の事情から、2015年8月に明らかになった山口組の分裂問題についても解説する。
「神戸山口組を結成した人たちは、6代目山口組の組長の盃をもらっている組織の上では『子分』にあたる。それで出て行ってしまったから、ヤクザの論理からすると、親子の縁を蔑ろにする『逆縁』ということになる。許されないことだ。
ヤクザは元々、実の親の言うことも聞かずに家を出て行ってしまうような連中なのに、盃をもらうと組織の規律には従う。それが出来なければカタギになるべき」