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「あそこの置屋の子だね」と島の人は奢ってくれた

――視聴者からは「飛田新地は話題にならなくて、売春島が話題になる理由は何ですか?」という質問もきています。

高木 やっぱり陸続きではない「売春だけで成り立っている島」だったことが大きいと思います。文献を紐解くと四国や広島にもあったという話はありますが、それが昭和を超えて平成まで存続し、さらに今も疲弊しながらも続いているので。

置屋で顔見せをする売春婦たち(2009年、著者提供)

――「女性は辞めたらどこへ行くの?」という疑問も寄せられています。つまり、借金を払い終えたら、ということですね。

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高木 払い終えたら、そのまましばらく居着く子も多かったと聞いています。借金を払っている間は監視が厳しいですが、基本的には島で女の子というのは稼いでくれる存在なので、大切に扱われていたんですよ。

 例えば居酒屋に飲みに女の子が行ったら、島の方たちが「あそこの置屋の子だね」といって奢ってくれたりとか。だから、ほとんど生活費をかけなくて暮らせる状態だった。島から出て他の風俗で働くより、知り合いもできたし、島にいたほうがいいと居着いちゃう。

――「口止めのために殺されたりすることはないの?」という質問もあります。

高木 ないと思います。やはり「女の子は稼いでくれる大切な商品」という考え方があるので、「よく頑張ってくれたね」と送り出す感じだったようです。

女性はいま1人で行けるのか?

――視聴者からは「女性が1人で行くのは危険な場所ですよね」というコメントもよせられていますが、いまは実際どうなんですか?

高木 今は全く危ないということはなくて。置屋があっても開店休業状態みたいな感じなので、女性1人でも大丈夫ですね。今はカップルで訪れている人もいます。前回出演した「文春オンラインTV」でも話しましたが、2020年にジャニーズのNEWSの4人が『NEWSな2人』(TBS系)という番組のロケで訪れて以来、NEWSの聖地みたいな感じになっているくらいです。

観光客を出迎える島の看板(著者提供)

――NEWSファンの女性たちは、渡鹿野島が「売春島」と呼ばれていたことは知らずに行っているんですかね。

高木 半々だと思います。いま「渡鹿野島」ってネットで打つと、「売春」みたいな感じで紐づいてくるので。でも、いまは何も怖いことはないです。

 知り合いの中では、小説家の花房観音さんが、亡くなられた作家の勝谷誠彦さんの『色街を呑む!』(祥伝社文庫)を読んで、1人で売春島に行かれた。勝谷さんの本には「A島」として売春島の体験談が書かれているんです。

 花房さんが「1人で行ってきました」と報告したら、勝谷さんは本当に全盛期のタブー視されていた時代に行っていますから「よく女1人で行くな!」と驚かれたそうです。ちなみに、花房さんは『うかれ女島』(新潮文庫)という売春島を舞台にしたサスペンス小説を書かれています。僕の本(『売春島』)では娼婦の話が1人、2人しか出てこないんですが、花房さんの小説は「女性から見た売春島」。僕の本と花房さんの本を一緒に読むと、この島がより立体的に見えると思います。