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師匠は「もっとも勝負根性が強いのは山崎君」

 私はかつて山崎さんの師匠である森信雄七段(2017年5月に現役引退)と、その弟子たちの取材をして『一門 “冴えん師匠”がなぜ強い棋士を育てられたのか?』(朝日新聞出版)という本を書いた。そのなかで森さんは「現役の一門の中でもっとも勝負根性が強いのは山崎君」と評していた。山崎さん自身、中学に通いながら森さんの自宅で内弟子時代を送り、「将棋が弱いならば死ねばいい、くらいの気持ちでした」と振り返った。

――いまの柔らかい山崎さんとだいぶご様子が違う気がします(笑)。

山崎 いやもう、中学時代のテンションがもう残っていませんよ。我ながら恥ずかしいです(笑)。

――なにか転機となることはあったんですか。

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山崎 10代のころは思い込みが激しかったですから。当時はネットもないし、携帯もないし、親と話すのは正月だけ、(高校に進学しなかったため)学校に行ってないんで友だちもいないし、将棋をするしかない。完全に世界が将棋だけのモノトーンで狭い。一冊だけ古本屋で哲学書を見つけて、その本だけずっと読んでいました。「自由とは何か」みたいなことを書いた本です。

©中田絢子

森門下はひとりでフラフラしている人が多い

――山崎さん以外にも、糸谷哲郎八段が棋王戦挑戦、西田拓也五段が朝日杯将棋オープン戦で準決勝に進み、昨年10月には室谷由紀女流三段が女流王将戦に初挑戦するなど、森一門の活躍が目立ちます。なにか理由はあるんでしょうか。

山崎 森門下はひとりでフラフラしている人が多いのですが、コロナで外に出られなくなって、練習する機会が増えたんじゃないでしょうか。私も糸谷さんと、彼のYouTube配信とか棋士会の仕事の合間合間にネット対局をたくさんしました。それはありがたかったです。

――昇級はどのように森さんにご報告されたんですか。

山崎 順位戦の対局の翌朝です。いつも対局を終えたあとは脳が興奮状態にあるので、夜はなかなか寝られないんですよ。それで朝までずっと起きていて、翌朝の8時くらいに電話しました。「良かったな」とひと言いただきました。

◆ ◆ ◆

 山崎隆之八段のインタビュー「“魅せる将棋”で初のA級へ『齢40にして強くなる』」の本編は、文春将棋ムック『読む将棋2021』に掲載されています。

 人気棋士のインタビュー、コラム、コミックが一冊にまとまった、観る将ファンに向けた「読む将棋」の決定版(全144ページ)。現在、好評発売中です。

文春将棋 読む将棋2021

 

文藝春秋

2021年3月9日 発売

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