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《便意、「後回し」にしていませんか?それが続くと…》自己診断が“危険”な便秘 免疫強化にもなる「自分でできる」対策

2021/03/28
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3つの「機能性便秘」

 一方の「機能性便秘」は、さらに3つの分類がある。「弛緩性便秘」「直腸性便秘」「痙攣性便秘」だ。

 弛緩性便秘は、加齢や薬剤(精神安定剤や医療用麻薬など)の副作用として起きることが多いタイプの便秘で、腸全体の動きが鈍くなって起きるもの。

 痙攣性便秘は、腸が便を肛門に向けて送り出すための連動した動きができなくなり、腸のあちこちが勝手に動いてしまうことで起きる便秘だ。こちらは原因として憩室症(大腸の腸壁に袋状の“部屋”ができる病気)や過敏性腸症候群(精神的なストレスに反応して腸が正常な動きができなくなる病態)がベースにあることが多い。

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©iStock.com

 そして今回の記事の柱となるのが、3つめの「直腸性便秘」だ。その仕組みを久保田医師が解説する。

「大腸を通ってきた便が直腸に達すると、センサーが感知して脊髄と脳に情報が伝えられます。情報を受け取った脊髄は、反射的に腸を収縮させて便を外に出そうとします。一方の脳も、肛門括約筋や腹筋など関係諸器官に向けて排便をアシストするように指示を出します。ところが、この連携がどこかで破綻すると、便が直腸に留まってしまう。これが直腸性便秘です」

 なぜその連携が破綻するのか。

 久保田医師によると、高齢者の場合は直腸のセンサーの鈍化。これは加齢による現象なので仕方ない面もある。

便意を「後回し」にしてませんか?

 しかし、女性の直腸性便秘は、便秘の患者である当人に原因があることが少なくないというのだ。

「センサーが正常に作動し、関係諸器官もスタンバイOKとなっても、ご本人が排便行動をとらなければ便は出ません。これを繰り返しているうちに、諸器官のほうが、『せっかく準備して待っているのに、そっちに出す気がないならもういいよ!』と不貞腐れてしまうのです。その結果、直腸に便が来ても動きが起きず、いつまでも便がそこに滞留して便秘になっていく……」

 人間の体はうまくできていて、食べたものが胃に到達するとそれに連動して腸が動き出し、いまそこにある便を排出して、腸管を空にしようとする。これを「胃・結腸反射」といって、特に朝食の時にこの機能は活発になるという。

朝の身支度の時間など、便意を我慢する生活を続けていると、体の方が順応してやがて便意自体が来なくなってしまう ©iStock.com

「朝食を食べた15~20分後に胃・結腸反射による便意が催されるのですが、女性の多くはこの時、お化粧や家事などで忙しくて、トイレを後回しにしがちなのです。それを毎日繰り返しているうちに、直腸も肛門括約筋も『そっちがその気なら……』となってしまう。これは私の個人的な意見ですが、女性に便秘が多い一番の要因は、ここにあるような気がしています」

 在宅勤務なら好きな時にトイレに行けそうなものだが、コロナ前の習慣に腸や諸器官が馴染んでいると、胃・結腸反射による便意も訪れなくなるという。「親孝行、したいときには親はなし」という諺が、なぜか頭に浮かぶのだが……。