「フィルム写真」の専門性を追求したい
西村が「より専門性を追求したい」と特に力を注ぐのが、フィルム写真に関わるサービス(現像、プリントなど)だ。
ひと昔前は家電量販店の店頭でフィルム1本100円で売られていたこともあったが、今では1000円近い値段が当たり前。しかも、フィルムの生産終了も相次いでおり、フィルムの種類も以前よりもだいぶ減った。
「10年以上前にトイカメラブームがあったと思うんですけど、一過性のもので、すぐに廃れていった印象がありました。その時点でフィルム自体の種類も少なくなっていたし、値段も上がってきていたので、僕らも、これ以上フィルムのお客様は増えないかなと半ば諦めていた部分があったんです」
デジタル全盛の時代、フィルムカメラは衰退する一方で、西村自身、生き残るためにどう舵をとるべきか、考えあぐねていた時期があった。
ところが、今でも根強いフィルム写真ファンがおり、特に、この5、6年は、インスタグラムなどのSNSを中心にフィルム写真が密かな盛り上がりを見せているのだという。
わざわざ和歌山や仙台から来てくれる愛好家も
「当初、僕らはそこを市場として見ていなかったんですけど、お客様の中に『#西村カメラプリント』というハッシュタグを付けてインスタグラムに投稿する人が出てきたんです。それで、『インスタグラムのタグを見て来ました』というお客様が少しずつ増えてきました。
この間にもフィルムの値段はどんどん上がっていたわけですが、僕たちも以前ほどは絶望を感じなくなりました。こういう状況でも、写真を楽しんでくれている人がいる。そういった人たちの要望に、僕たちなりに応えることができたらいいなと思っています」
郵送でもフィルムを受けていたが、わざわざ私鉄を乗り継がなければならない東伏見に、和歌山や仙台などの地方から訪ねて来たフィルム愛好家もいたという。
「遠方から東伏見までわざわざ来てもらっても、他に何かがあるわけではありませんから、申し訳ないなと思っていました」
JRと私鉄が乗り入れる吉祥寺に店を構えたのは、客のアクセス面を考慮してのことという側面もあった。