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1年以上経っても回復が続いている

 治験実施責任医師の新妻邦泰・東北大学大学院教授は、言語障害の回復についてこう話す。

「口が回りにくかった患者さんがスラスラ回るようになった事例もありますし、失語症といって言いたいことが口から出てこない患者さんも徐々にしゃべれるようになり、日常的な会話や意思伝達に困らなくなった方はある程度の数います」

 さらに、治験のデータには表れない「その後」にも言及する。

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「(1年間という)治験の範囲を超えますが、その後もこの治療を受けた患者さんを診ていると、さらに回復されている方がいます。驚くべき内容だと思いますが、一般的には6か月以降、回復が頭打ちになるものが、その後も良くなっているんです」

 CL2020の治験を進めてきたLSIIの木曽誠一社長は、以前のインタビューでこう述べている。

「脳梗塞を患うと、歩みを奪われたり、言葉を奪われたりと、昨日とは違う自分になってしまいます。でも、それが快復して社会に戻り、日常を取り戻すことができたら、プライスレスの価値があるんじゃないかと思います」

「この薬剤が福音になることを願っています」

 LSIIは今年度中にCL2020の新薬としての承認を厚労省に申請する予定で、早ければ来年度には、製造販売が承認される見込みだ。

 前出の冨永氏は、40年近く脳梗塞の患者や家族と接してきた医師として、また世に出る前の薬の効果をいち早く目の当たりにした病院の長として、希望を口にした。

「この薬剤が、脳梗塞の患者さんにとって福音になることを願っています」

出典:「文藝春秋」3月号

「文藝春秋」2021年3月号および「文藝春秋 電子版」では、「『ミューズ細胞』の再生医療革命」と題したルポを掲載。発見者である出澤教授自身に、ミューズ細胞の特徴やメカニズムの解説、「うっかりミス」が突破口となったという発見に至る経緯などをたっぷり語ってもらった。またミューズ細胞製剤を手がけるLSIIによる異例の挑戦も紹介し、出澤教授と描く「医療革命」の展望に触れている。

文藝春秋

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「ミューズ細胞」の再生医療革命