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金銭面の渋さは恨んでいない

 株主総会ではこの短いやり取りだけで終わってしまったが、鈴木氏は柳井社長に直接、今回の争いについて話を聞きたいと思っていた。係争中の現在もなお、柳井社長は鈴木氏にとって尊敬すべき経営者だからだ。

「東レ時代に柳井さんの本を何冊も読んで、“正しい人”“正義の人”だと思った。その思いは今も変わりません。金銭面で渋い会社であることは事実ですが、そうでなければあれだけの成長はできないでしょう。だからそのことを恨む気持ちはないんです。

 ただ、柳井さんの下にいるスタッフが、事実とは異なる報告を上げている可能性もゼロではないでしょう。だから私は何度も『直接柳井さんと話をさせてほしい』と頼んだけれど叶いませんでした。仕方がないので、女房の貯金を崩してもらって、借りたお金でファーストリテイリングの株を買って、株主総会に行ったんです。やることがダサいですよね。ホント、恥ずかしいです(笑)」

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「柳井さんは“正しい人”“正義の人”だと思った」と語る鈴木氏

訴訟が長引くほどファーストリテイリングが有利に

 知財高裁に訴えを退けられたファーストリテイリングは今年6月2日、最高裁に上告した。これで両社の争いは当面続くことになる。

 じつはこのセルフレジの特許権は今年2月、アスタリスクからNIPというパテント管理会社に譲渡されている。しかし、裁判費用はNIPが負担するものの、アスタリスクは発明者であり、この特許を用いた製品は販売する。特許を守るという点で、実質的には「ファーストリテイリング対アスタリスク」という図式は変わっていない。

 過去の事例を見る限り、知財高裁で判決が出たものを最高裁に上げても受理される見込みは極めて薄い。当然ファーストリテイリングもそれは知ったうえで上告しており、不受理になる可能性が高い。それでも上告するのはなぜなのか。