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「変身しないものは書けない」脚本家・小林靖子が語る特撮と時代劇の未来

「テレビっ子」小林靖子インタビュー#3

note

ネット配信だと血のりを出せる量もテレビより緩い

―― ネット配信ドラマでは『仮面ライダーアマゾンズ』(Amazonプライム)の脚本を書かれています。テレビとの違いは感じますか?

小林 大きな違いは絶対1話から見てもらえるというところですね。テレビだと途中から見始めた人のために「前話解説」「これまでのあらすじ」を用意しなければなりませんでしたけど、動画配信だと誰もが1話から追いかけられるので、初見さんを意識する必要はないんです。だから次回予告さえもいらない世界なんじゃないかと思ってます。

仮面ライダーアマゾンズ(シーズン2)制作発表 ©時事通信社

―― ドラマ作りの点で言うと、配信の場合、1話から見る人前提となるので、長期的な伏線を入れられるようになったりしませんか。

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小林 まぁ、そこはそんなには意識はしてないです。ただ、本当に普通に連続したお話ができるっていうのはありますね。ライダーものとはいえ、この回で絶対に主人公が変身しなきゃいけないとか、そういう縛りが特にないんです。おもちゃもそんなにたくさんは出てないので、変身ベルトを毎回映してくださいとか、そういうのもない。あと血のりを出せる量もテレビより緩い(笑)。

―― あはは。じゃあ、ちょっと過激なこともやりやすい。

小林 過激なことをやっても、Amazonさんが1行画面に「気をつけてください」って注意を入れるだけっていう(笑)。テレビだと血を出せないから別の方向で脚本を考えなければならないことがありますが、動画配信の世界は必然に合わせてドラマを進行できる、という自由度があるんですよね。それは過激なことをわざとやれる、ということではなくて、不必要な労力をかけずに済む、という意味でとてもありがたいと思っています。

―― 今はコンプライアンスも声高に言われるご時世ですから、アクションものを書くのも一苦労な時代ですよね。

小林 うーん……、声をあげる人に合わせすぎている面もあるんじゃないか、という感じもしています。本当はすごく少数な意見なのに、ちょっとした炎上で大騒ぎしているのが、私にはちょっと疑問です。

―― この時代、勧善懲悪をはっきり書きすぎるのは難しいというのはありませんか?

小林 そこまではないですね。むしろ、作り手のマンネリズムがあって「変えなきゃ」という使命感はあるかもしれない。

 

ショップチャンネルの北條真紀子さんの「北條節」がすごい

―― 小林さんはいま、どんなテレビ番組を見ているんですか? 

小林 ショップチャンネルです。24時間ずーっと通販やってるチャンネル。大体それをつけてます(笑)。

―― 買うんですか? 

小林 すごいですよ。毎日のように宅配便が届きます。食べ物から洋服から靴から、何でも。タレントさんじゃなくて、「キャスト」って呼ばれる方が商品説明して番組を進行していくのが面白いんですよ。名物キャストの北條真紀子さんは「北條節」とか言われるくらい、うまい。

北條真紀子さん(ショップチャンネルHP)より

―― セリフっぽい感じ?

小林 いえ、全部キャストさんのアドリブなんですって。

―― 民放のショッピング番組はタレント主義になってきてますよね。

小林 だからこそ新鮮なのかもしれません。タレントさんが2~3人出て、「ワーッ」てわざとらしくため息をつくお客さんがいて、っていう設定じゃないんですよね。通販番組は昔から大好きで、1回、通販ネタを脚本で書いたことがあります。当時はハマっていた海外の通販番組の大げさな感じが面白すぎたので。

―― よく夜中にやっていましたね。

小林 包丁の切れ味宣伝するのにまな板切っちゃうし、ベッドの宣伝するのにトラを寝かせちゃうし。やりすぎ感がたまりませんでした。