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2021/07/06

genre : ライフ, 教育

 たとえば、冒頭に紹介した長い文――「何十年も前に買った辞書をずっと使い続けてきましたが最近は俳句の会にもよく顔を出すようになったので思い切って新版を求めました」

 この文には3つの出来事が記されています。すなわち、(1)辞書をずっと使い続けてきたこと。(2)最近は俳句の会に顔を出すようになったこと。(3)思い切って新版を買い求めたこと。

 この3つの出来事が明瞭に区別されるようにテンを打つと、以下のようになります。

 「何十年も前に買った辞書をずっと使い続けてきましたが【、】最近は俳句の会にもよく顔を出すようになったので【、】思い切って新版を求めました」

 このように、出来事と出来事を分けることができれば、テンの役割の大部分は果たされていると考えます。

第2条・割り込んだ部分の直前に打つ。

 もうひとつは、誤読を避けるための原則です。たとえば、「次男はヨーロッパに行った母からはがきをもらった」という文があるとします。「次男はヨーロッパに行った……」まで読むと、一瞬「次男が行ったのかな?」と思います。その直後に誤解は解けますが、読者にとってはストレスです。

 この文で骨格となるのは、「次男は母からはがきをもらった」の部分です。そこに「ヨーロッパに行った」という句が割り込んでいるのです。そこで、その割り込んだ部分の直前にテンを打ちます。

 「次男は【、】ヨーロッパに行った母からはがきをもらった」

 これで、次男がヨーロッパに行ったと受け取る読者は減るはずです。

よりよく伝わる文章にするためのテン

 このほか、実際に文章を書いていると、個人的なルールは次第に増えていきます。たとえば、「ただし」「したがって」のような接続詞の後にもテンを打ったほうが、論理展開が分かりやすくなります。あるいは、「ここではきものを脱いでください」のように仮名が続く場合、誤読を防ぐために「ここで、」とテンを打つこともあります。

©iStock.com

 細かいことを追求すれば、条文が増えていくのがルールの常です。ただ、私自身が「テンを打つべきか、打つべきでないか」と迷うのは、上に述べた2つの場合がほとんどです。よりよく伝わる文章にしたいと思うとき、この「テンの打ち方2か条」は、われながら重宝しています。

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