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小島秀夫が観た『ブレードランナー2049』

ブレードランナーは“ユニバース”の夢を見るか?

2017/10/29

genre : エンタメ, 映画

ハリウッド資本と“ユニバース”化の夢

 本作は多くの「ブレラン」ファンを満足させてくれるはずだ。ファンが夢見た「ブレラン」の正解であり最終回だったからだ。『ブレードランナー』が残した謎は見事に決着がつけられている。満足度は150%と言ってもいい。本作について、その優劣や、「ブレラン」を超えたかどうかを議論することはあまり意味がないように思えるし、おそらく賛否両論、議論百出とはならないだろう。だからこそ、この映画は後世には残らないかも知れない。少なくとも『ブレードランナー』のようにカルト化し、いつまでも語り継がれるような残りかたはしないだろう。ファンは満足するが、そのあとにさらに残る“余白”がないのだ。

 その反面、一般の観客には敷居が高すぎたのも事実だ。35年前の前作を見ていることを前提とした内容は、ファンには響くが一般客には難しすぎる。

『ブレードランナー2049』より

 ハリウッド資本は「ブレラン」をユニバース化(シリーズ化)する夢を見ているのかも知れない。謎に決着をつけ、ファンも満足させた本作で、「ブレラン」は一度終わった。そのあとから、一般の観客でも楽しめる“ブレードランナー・ユニバース”を始めることができるだろう。

 だがその“ユニバース”は、我々ファンにとっての「ブレラン」ではない。

『ブレードランナー2049』は、ハリウッドが夢見たのとは別のユニバースを生み出した。完璧に完結した続編を提示されたことで、我々ファンは、前作へと帰らされる。誰にも解けなかった答えを見て、もう一度問題を読み返したくなるようなものだ。素晴らしい解答が、問題の凄みを改めて教えてくれるのである。続編から前作へと回帰(ループ)する新しい“ユニバース”を本作はつくったのだ。

 だからこそ、我々ファンは「ブレラン」の夢を見続けることができる。

『ブレードランナー2049』の続編は『ブレードランナー3』ではない。1982年の『ブレードランナー』に戻るのだ。ファンにとってそれは、オフワールドに広がる“ユニバース”ではなく、「2049」と「2019」を無限にループする“ユニバース”なのだ。

 この後、私は『ブレードランナー ファイナル・カット版』を見て、夜を過ごそうと思う。「ブレランの夢」のつづきを見るために。それが私にとっての“ブレードランナー・ユニバース”である。

INFORMATION

『ブレードランナー 2049』

10月27日(金)全国ロードショー

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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