2番目の兄(佐々木蔵之介)は得意先を紹介してくれる
――ホームページのごあいさつに、「まさか酒屋を継ぐことになるとは思っておりませんでした」と書かれています。
「前職は機械屋の営業担当でした。私は酒造という家業をピンチヒッターとしてやっていると思っていますので、自分の担当する期間を全うすることだけを考えて日々やっているだけです。昔はお酒を売ることができるのは酒屋さんだけでした。その頃は酒屋さんと酒屋さんまで何メートル空いていないといけないという距離基準や、このエリアにはこの軒数でしか酒を販売してはいけないという人口基準という規則があったんです。そこから、要件さえ満たせば販売の許可が降りるように変更され、コンビニやスーパー、ドラッグストアにまでお酒の販売が許されている状況になった。我々のような酒をメインとした販売店は、難しい局面に立たされています」
――周囲にあった酒造の多くは移転したり、辞められたりしているそうですね。
「造り酒屋はたくさんありましたが、今では土地を貸して違う地で別の商売をしたり、土地をマンションや駐車場にして別の場所で酒屋をやってはります。うちは(家業を維持するために)先祖から受け継いできた土地を売ったりしながら、家業を残した。早くにこの地を離れて受け継いだ資産を守ることを決めた人、うちのように事業を残した人……どちらがいいのかはわかりませんが、事業を残すという選択をした以上、私は次の世代へ渡すために全うするだけ。誰が跡を継ぐかは決まっていませんが、今は家業を続けていくために、多くの人にお酒を楽しんでいただくためにいいお酒を造り続けるしかないなと思いながらやっています」
――家業を繋いでいくために、2人のお兄さんに相談することもあるのでしょうか。
「もちろん協力してくれていますよ。会社に入っているのはたまたま私だけですけど、2人の兄にとっても家業ですからね。2番目の兄(佐々木蔵之介)は得意先を紹介してくれますし、1番目の兄はコンサルタントをやっているので困ったことがあると、本人がわからなくても知り合いの専門家に聞いてくれてアドバイスをくれるので心強い存在です。とはいえ、うち程度の家業なんて、そんなに大したものではないですよ」