私にとっての青春は、ここにあると思っています
――同年代の高校生が、楽しそうにいわゆる“普通の学校生活”を送っているのを横目に見ると、羨ましく感じることはありませんか?
中澤 めちゃくちゃ羨ましいですよ(笑)。ただ、それはまぁ…ないものねだりだと思っています。普通の高校生からしたら、高校生のうちから起業している自分が羨ましく見えるでしょうし、「隣の芝生は青く見える」というか、それは互いにあるでしょう。
現在、会社の社員は8人ですが、私を含めて6人が高校生です。みんな昼間は普通に高校に通っていますが、放課後になるとヒルズに続々と出勤してきます。仕事自体はリモートでどこでもできますが、私にとってはオフィスが仲間に会える学校のような場所です。オフィスにはニンテンドースイッチや卓球台があって息抜きにみんなで楽しめますし、シャワーもあるので快適なんです。私にとっての青春は、ここにあると思っています。
「やりたくないことをやってお金を稼ぐ」世の中を変えたい
――教育事業を手掛けているということですが、現状の日本の学校教育についての意見を聞かせてください。
中澤 私が憧れるのは、「ビジネスの経験値」と「アカデミックな専門知識」、「政策的な視野の広さ」の3つを兼ねそなえた人間です。自分が今熱中しているのは統計学ですね。いわゆる学校でのテストの点数では測れない、目標の立て方や、計画遂行能力などを含む「非認知能力」を定量化するためには統計学の知識が必要で、そうなると数学的知識はもちろん必須です。理科の実験を通した実証プロセスもめちゃくちゃ参考になります。先人の考え方や思想を知る上で、国語や社会も欠かせません。私自身、点を取るためだけの勉強には全く身が入りませんでしたが、義務教育の内容には圧倒的に価値があると思います。ただ、その価値を高められるかは、本人に目標があるかどうかにかかっているでしょうね。
特に教育分野は「自分がこうだったんだから、今後も●●するべきだ」と、経験で語られがちです。でも、教育の分野であっても、その効果は経験則ではなくデータで語るべきだと思っています。だからこそ、しっかりと効果を測定するために、統計学を学ぶ必要がある。慶大SFCの中室牧子教授が同様の研究をしているので、自分も今後は慶大で教育経済学の分野を極めたいと思っています。
――高校生にしてそこまでビジネスにのめりこむ…そのモチベーションはどこにあるのでしょうか。
中澤「やりたくないことをやってお金を稼ぐ」という生き方はストレスが溜まりますよね。でも、実際にはそうしなければ生活できない人が今の世界にはたくさんいる。そんな世の中を変えたいと思っています。例えば他の若手起業家に多いように、SNSを活用して情報商材を売るなど「個の力」を高め、世界に影響を与える方法もあるとは思います。ですが、ベンチャー界隈にいる私としては、ソーシャルビジネスとして「やりたくないことをやらなければ生きていけない」という社会を変える起業家になりたいと思っています。
撮影=上田康太郎/文藝春秋
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