SNSの中でも動画を選んだのは、普段小説を読まないような人たちにも小説の魅力が伝わるんじゃないかと思ったからです。YouTubeとTikTokの両方を考えて、TikTokを選びました。
──気になる発言ばかりです……。まずは、「就活で大失敗」ということですが、これはどういうことかお聞きしてもいいですか?
けんご 「失敗」というか「間違えちゃった」んですよね。
僕はずっと野球をやってきて、チームの団結とかコミュニケーションとかは得意なつもりでしたし、どうせならそういう経験を活かしたかったので、営業職に絞って就活をしたんです。でも、その内定者研修に出た時に、どうしても自分がその会社で働くことが無理だと気がついてしまったんです。研修が終わったその場で「ごめんなさい、無理です」と内定を辞退しました。それが去年の7月です。
上場企業のすごくいい会社だったので、両親には「ごめん、俺はフリーターとして生きていくかもしれない」と宣言していたんですけど、たまたま就活中にお世話になっていた方の仕事を手伝わせていただく機会があって。そのまま、その企業のお手伝いをしながら個人的にSNSで小説紹介をする形で現在に至っています。
就活では大失敗しましたが、そこで失敗していなければ今TikTokクリエイターとして活動はできていなかったと思うので、結果的にはよかったのかな……という感じですね。
Tik Tokを選んだのは普段本を読まない中高生にアプローチできるから
──「SNSをしたことがなかった」というのも驚きです。YouTubeではなくTikTokを選んだのはなぜですか?
けんご 小説が苦手な人や、普段小説を読まない人に見てほしかったので、中高生の視聴者が多いTikTokを選びました。それに、YouTubeはサムネイル画像をクリックしないと動画が見られないので、もともと小説が好きな人や紹介した作品が好きな人にしか見てもらえないんじゃないかと思ったんです。TikTokならおすすめ機能で勝手に動画が流れてくるので、小説に関心がない人にも届くし、そこで「面白い」と思ってフォローしてもらえれば、より多くの人に見てもらえるのではないかと思いました。
今、TikTok、Instagram、Twitterを使っていますが、TikTokとInstagramは小説紹介に特化し、Twitterは僕が紹介した小説が重版したというお知らせや、僕の帯をつけてもらった作品の紹介など、僕自身の企画やインフォメーションという形で使い分けています。
TikTokがどこにも負けない最強のプラットフォームだと確信したのは、3~4本目の動画で紹介した作品が重版になった時です。自分では、普段小説を読まない層に小説の魅力が伝えられるような構成を考えて、これがベストだと思う脚本で仕上げられたのである程度の反響は見込んでいましたが、実際の売上げに貢献できたというのは嬉しかったですね。
動画の「再生回数」よりも本の「重版」
「バズる」の基準は人によっていろいろ違うと思いますが、僕の場合は「いいね数」でも再生回数でもなく、「作品が重版される」かどうかが基準です。なので、「この動画面白い」ではなく、「この作品読んでみたい」と思ってもらえるような動画制作を目指しています。