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──本屋でも出版社でもないけんごさんには「重版」よりも「再生回数」のほうが大きなメリットがあると思うのですが、なぜ「重版」なのですか?

けんご それが恩返しだと思っているからです。僕は今まで読書好きが周りにいなかったので、今、出版社の方や編集さん、書店員さんや読書好きの方とお話しさせていただくことが幸せでたまらないんです。もちろん本を読むのは好きですが、誰かと本のことを話すのはもっと好きですし、小説紹介を始めたことで、大好きな小説家の方たちとも親しくさせていただくことができるようになって、本当にありがたいと思っています。なので、僕が紹介するすべての作品を重版させて小説に関わるすべての方たちに恩返しができたらという思いでやっています。

 

 TikTokで漫画や映画を紹介している人はたくさんいるんですが、悲しいことに小説紹介を続けている方は僕以外にいないんですよ。よく「けんごさんみたいに動画紹介をして有名になりたい」というご相談もいただくんですが、そういう方には、「自分が有名になろうと思わないで、作品を有名にしようと思えばバズるよ」と伝えています。

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トレンドも研究しつつ中高生に響く表現を強く意識している

──動画をバズらせるためのテクニックなどもあれば教えてください。

けんご 小説が苦手な方や小説をあまり読まない方に、どうやったら興味を持ってもらえるかというところにはかなり頭を使っています。

 僕はだいたい30秒から1分で終わるように動画を作っているのですが、1動画の脚本を考えるのに5~10時間くらいかかることもありますし、時には何日もかかることもあります。

 それと、TikTokは中高生の視聴者が多いので、どの言葉を使えば中高生に響くのかというのは、強く意識しています。

 

 たとえば、綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』を紹介した時は、作品には出てこない「推し」という表現を使いました。僕がこの作品を中高生たちに伝えるには「推し」という言葉で伝えるのが最適解だと判断したからなんですが、どういう言葉が刺さるのかというのはTikTokのトレンドをチェックしたり、インスタのストーリーでフォロワーさんにお聞きしたりするなど、常に研究しています。トレンドも意識して追うようになりました。

 最近は視聴者に問いかける手法も多く取り入れています。たとえば、楪(ゆずりは)一志さんの『レゾンデートルの祈り』の紹介動画では、冒頭に「もし安楽死が合法化されたら、あなただったらどうしますか?」と問いかけることで、この作品を読んでくださった方たちが「自分だったらどうする」と盛り上がるきっかけになることを意識しました。