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海馬と前頭葉のブレーキ

 ありがたいことに、扁桃体の大さわぎにブレーキをかけてくれる脳のシステムがあります。そのひとつが記憶をつかさどる「海馬」です。イメージとしては扁桃体がアクセルをふんで、海馬がブレーキをかけるという感じです。強い感情によって起きた反応を海馬が和らげてくれるのです。扁桃体が「これは命が危険だ!」と叫んでも、海馬が扁桃体の暴走を止めてくれるので、脳の他の部分は「少し危ないかもしれないから、一応気をつけておこう」と思うくらいですむのです。

 もうひとつ、脳には「前頭葉」というブレーキもあります。前頭葉は物事を分析したり、じっくり考えたりする時に使う脳の部分です。例えば、乗っている飛行機が急に大きくゆれたら、扁桃体はすぐに警報を鳴らすでしょう。そして思わず「ヤバい、落ちる!」と感じるはずです。その時に前頭葉の、特に「前頭葉皮質」という部分が「大丈夫、飛行機はエアポケットに入っただけだ。こういうことは前にもあったけれど、飛行機は落ちなかった。だから今度も落ちるわけがない」と冷静に分析して、心を落ち着かせてくれるのです。

©️iStock.com

ストレスホルモンの働き

 長距離走を走り終わった後でも、クマの冬眠の発表が終わった後でもいいのですが、脳の各部分がきちんと機能していれば、ストレスはいつかおさまるものです。

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 その仕組みを説明するには、また扁桃体―脳の警報器―に話を戻さなくてはいけません。扁桃体が警報を鳴らすと、体の中で「ストレスホルモン」とも呼ばれる「コルチゾール」が出ます。ホルモンというのは体に反応を起こさせるための化学物質です。

 危険が過ぎ去ると、扁桃体は落ち着きます。するとコルチゾールのレベルも下がって、元通りの状態になるのです。